ヘリが飛行場以外の場所で離着陸するには許可がいるということは分かったけど、消防防災ヘリって、申請していないところに急に着陸しなきゃならなくなったらどうするの?片っ端から申請しておくの?
それともまさか、内緒で着陸しちゃうの?

人命救助などを目的とした場合は特別なルールがあって、申請していないところでも合法的に離着陸が可能になるのです。
これを「捜索救助の特例」といいます。

実はこの仕組み、消防防災ヘリだけではなく、ドクターヘリ、警察、海上保安庁、自衛隊機なども同じ扱いです。

この記事では、こういう公的な運航を行うヘリにとって非常に重要なルールである、航空法第81条の2「捜索救助の特例」について、できるだけ平易に解説します。

※3分で理解できるようにするため、敢えて条文そのものは記載していません。

なお、場外離着陸場の意義や設置の手順など基本的なことはこちらからどうぞ:

航空法第79条:飛行場以外の離着陸は原則、許可が必要

航空法第79条は、原則として飛行場以外の場所での離着陸を禁止していますが、運航者が国交省に申請し許可を得られればそれが可能となります

しかし、例えば消防防災ヘリのように、要救助者の引き継ぎのためなどで、申請していない場所でも急遽離着陸しなければならない場合もあります。そんなときに申請している暇はありません。

そこで航空法第81条の2「捜索救助の特例」 の出番です。

航空法第81条の2:捜索救助など“許可を待てない状況”の特例

航空法第81条の2は、次のような場合であれば、場外でも申請・許可を省略して離着陸しても良いこととしています。

  • 人命救助
  • 火災その他の急迫した危難
  • 救急搬送・医師や薬剤の緊急輸送 など

要するにこれらは消防防災ヘリでいうところの「緊急運航」の場合です。

じゃあ、場外を整備するとき、緊急運航でしか使用しない前提なら許可基準は無視しても構わないの?

それは運航者に相談した方が良いです。なぜなら、緊急運航のための離着陸場の基準は全国共通のものはなくて、航空隊ごとに個別に定めているからです。

特例だからといって、どこでも降りられるわけではない

物理的制約とは別問題

特例適用下では、場外離着陸の許可基準を満足しない条件の場所であっても、物理的には離着陸可能になりますが、技術的な可否は(安全面も含めて)最終的には運航者自身が判断します。

ただ、言うまでもないことですが「捜索救助の特例」は法的に許可不要の枠組みを与えるに過ぎず、物理的な離着陸の可否範囲を拡大するものではないことに注意が必要です。

任務に無関係な場所への離着陸が許可されるわけではない

わざわざ法律には書かれていませんが、当然のことながらその行為は任務遂行に寄与するものでなくてはなりません。たとえば、「捜索救助の特例適用中だから」という理由で、コーヒーを買うためにコンビニの駐車場に着陸する、というこ許されません。

捜索救助の特例適用中でも、任務に無関係なことをしていいという意味ではない。

まとめ

  • 飛行場以外の場所で離着陸する場合、訓練なら申請が必要
  • 災害・救助時は、「捜索救助の特例」により申請なしで離着陸が可能になる
  • 特例適用下であっても実際に離着陸できるかどうかは運航者が判断
ABOUT ME
もげら47
自衛隊で大型輸送ヘリの機長として15年勤務。震災や林野火災など多数の災害派遣に出動。|その後、消防防災航空隊に転職し、消防防災ヘリの機長として10年以上にわたり山岳救助や空中消火活動に従事。|次いで2年間、地方自治体の防災課で防災関連の事務事業を推進するなど、防災一筋の人生。|現在はこうした経験を活かし、防災士ブロガーとして防災関連の情報を発信しています。|【保有資格】防災士・事業用操縦士(回転翼機+飛行機)・航空無線通信士・乙種第4類危険物取扱者・他|