日常の備え

【災害用の水は何リットル必要?】家族の人数×日数でわかる備蓄量と保存のコツ

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地震などの災害への備えとして食料とか水を備蓄しておいた方が良いっていうけど、水はどれくらい備蓄しておけば良いんだろう?
あまりたくさん置いておくのもじゃまになるし、無駄になったらいやだなあ…。

確かに、水の備蓄量は気になるところ。
多すぎても邪魔だし、不足したら大変だし。
じゃあ「ちょうど良い」量と、その保存方法を見てみようね。

はじめに

水の備蓄は、飲用や炊事など口にいれるための飲料水とトイレを流したり洗い物をするための生活用水は分けて考えましょう。
飲料水の備蓄量の目安はこんな感じです。

成人1人当たり4日分の12L

つまり2L入のPETボトル6本です。(写真)

トイレを流したり洗い物をするための雑用水については、こちらでご案内します:
災害時の断水を生き延びよう!生活用水の確保は普段の準備から

多くの書籍や自治体では一人当たり9Lという量を推奨していますが、実はこれ、文字通りの必要最低限度です。状況にもよりますが、これでは不足する場合もあるかも知れません。

ここでは災害に備えるための「水の備蓄」について、その量や工夫、注意事項などを解説しますね。この記事を読めば、ご自分に合った備蓄量を把握できるようになるでしょう。
それではどうぞ!

なぜ水を備蓄しなくてはならないのか

そもそもの話ですが、まず水を備蓄する目的から確認しましょう。
それは、例えば大きな地震が発生するとしばしば断水するからです。
例えば最近のメジャーな震災では次のような期間、断水しました。

  • 1995年  阪神・淡路大震災:約3ヶ月
  • 2004年  新潟県中越地震:約1ヶ月間
  • 2011年  東日本大震災:約5ヶ月間
  • 2016年  熊本地震:約3ヶ月半間
  • 2018年  北海道胆振東部地震:約1ヶ月間
  • 2024年  能登半島地震:3ヶ月以上

では、地震が発生するとなぜ断水するのでしょうか。

それは地下に埋設している水道管が破損したり損傷を受けるからです。また、津波で家が流されたり、土砂崩れによって家屋が押し流されたりして水道管の接続部分が壊れることもあります。

大阪北部地震で水道管が破損

このような物理的な損傷を受けた水道管を全て補修するには大変な労力と時間がかかります。だから発災後の断水は簡単には解消せず長期に及ぶのです。

水がなくなったら給水車がきたり全国各地から支援物資が供給されるんじゃないの?
市役所が備蓄食料とか配ってくれるんじゃないの?

それは期待しないほうが良いです。だって災害の備えはまず「自助」が基本ですから!
支援物資の供給は災害の規模や道路状況、地域などによってかなりばらつきがあるため、「公助」を最初から当てにするといざというとき困ることになります。

水以外の備蓄については、こちらの記事で紹介しております:
その備蓄で大丈夫?今すぐ始めるべき正しい災害備蓄の方法

災害時に必要な水の備蓄量はとは?

1人1日あたりの必要量とその根拠

自治体や官公庁は、

  • 飲用に1L
  • 炊事+衛生用(うがい、手洗いなど)に2L

とし、一日あたり計3Lを推奨しています。筆者が勤務していた自治体でもそのように普及してきました。でもこの量はどのような考え方に基づくものなのでしょうか。

それは、1つには人が一日に失う水分量から考慮した摂取すべき水分量から来ています。
成人の場合、一日で尿+便で1.6L、呼吸や汗で0.9L、合計約2.5Lの水分が失われていると言われています。(国交省、厚労省)

一方、食事に含まれる水分と代謝によって1.3L(食事1L+代謝0.3L)を摂取します。

(出ていく分)2.5L-(入ってくる分)1.3L=1.2L

よって、差し引き1.2Lを飲用で補う必要があります。

体重や体質によって個人差があるでしょうが、1Lであれば、概ねこの1.2Lと整合し、管理しやすい量になりますね。

次に、これに炊事+衛生(手洗いや簡易な洗い物)などの使用を2L程度と想定します。 これらを合計すれば上記のように3Lとなります。

1日あたりの量はこれを最低ラインとし、家族構成や生活スタイルに合わせて備蓄量を調整してみると良いと思います。

ただ、ここでちょっと考慮事項があります。

酷暑時に水不足になれば命に関わります。断水に加え停電していればエアコンも扇風機も冷蔵庫も使えませんから、熱中症の危険度が飛躍的に高まります。自分と家族の命を守るには、こうした最悪の事態を想定しておくことが重要です。

特に、災害直後は様々な理由により医療サービスを受けるのが困難になるので、怪我・病気をしないよう、よりいっそう気を付けなくてはなりません。
あわせて読みたい:
災害時の怪我は想像以上に深刻──自分も周囲も守る「怪我をしない備え」が最も大切

よって、災害時はこうした状況に応じて炊事+衛生用を飲用に回すなど、バランスを取りながら計画的に消費していく工夫も必要です。

何日分を備えるべき?備蓄の対象となる期間の考え方

何日分準備すれば良いの?

1日分の備蓄量は分かりました。

では、それを何日分準備すればよいのでしょう。
つまりどれくらいの期間を備蓄水で過ごすと想定すべきでしょうか。

多くの自治体では「最低3日分」と案内しています。
この期間は、多くの災害において、給水支援が始まるまで3日程度を要してきたという実績から考慮されたものです。
しかし筆者はさらに1日多く見積もって4日分をお勧めします

その理由は最近の震災における給水支援開始までの期間と、今後警戒すべき巨大地震による影響を考慮するからです。

給水支援開始までの期間

最近の震災における給水支援開始までの期間はこんな感じです:

  1. 東日本大震災(2011年)
    地域によって異なるが、早い地域で1~2日、遅い地域では1週間以上
  2. 熊本地震(2016年)
    被害の大きかった地域や交通の遮断された地域では3~4日
  3. 北海道胆振東部地震(2018年)
    札幌市などの都市部では地震発生翌日から始まったが、被害の大きかった厚真町などでは2~3日
  4. 能登半島地震(2024年)
    一部の地域では翌日には井戸が開放されたが、給水車による飲用水の供給が開始されたのは1週間後

断水翌日から給水が開始されたり、付近に井戸があるのはかなりラッキーな方だと思われるので、それを当てにせず次の点を考慮しておいた方が良いでしょう。

  • 1週間以上かかる例がある
  • 支援開始時期は予測できない

特に、(南海トラフ巨大地震のように)災害の規模や被災範囲が大きくなれば…

  • 近傍の給水支援をする機関が無事とは限らない
  • 支援対象地域が広域化するため更に支援が困難化する。
  • 土砂崩れで道路が寸断すれば給水車がアクセスできなくなる。
がけ崩れで道路が使えなくなることも

備蓄の対象となる期間は

こうしたことを考慮すると、せめて標準+1日の4日分は自活できるようにしておいた方が良いと考えます。もちろん、水は多ければ多いほど安心ですが、重たくてかさばるからと備蓄に嫌気が差してしまっては本末転倒なので、この辺が現実的な線ではないでしょうか。

で、結局備蓄量は?

さて、以上を踏まえたうえで最低限備蓄しておくべき具体的な量を試算してみましょう。

一人1日必要量=3L

これが4日分なので、
3L×4日=12L

となります。これを元に世帯人数ごとにまとめたら次のようになります:

世帯人数[人]1234567
必要量[L]12243648607284

備蓄水の保存のコツ-置き場所の工夫

いかがでしょうか。子供の場合は大人よりは消費量が少ないので少々割引が効くとしても中々の量だと思いませんか。

うち、賃貸で収納が少ないから、これだけ大量の水を備蓄するのはスペース的に負担だなあ

ですよね、
ただ置いておくだけだと邪魔になるので、せっかくなら食器棚や洋服ダンスなどの下の方に置いて重心を下げるための重りとして使いましょう。転倒防止に役立ちます。

間違ってもめったに使わないからと棚の上の方に保管してはいけません。

あと、こうして分散して保管することで、万一のときにも備蓄品の全損を防ぐことが出来るね

備蓄水の選び方

備蓄のための保存水は何を基準に選べば良いの?どれも一緒なの?と思うかも知れません。
ペットボトルだと一度開封した場合はすぐに飲みきらないと品質劣化が気になります。

実はバッグインボックス(BIB)という方法もあります。これは水の入ったビニールパックが箱に入っている容器のこと。

これなら水パックが使用する度に縮むので、 開封後も天然水が空気に触れず、衛生的かつ安心して利用できるし、 使用後は小さくつぶして家庭ごみやリサイクルゴミとして処分できるので、 ペットボトルのようにかさばることもありません。
また、賞味期限が1年と長く、最大5箱まで積み重ねてストックできるので、省スペースで回転備蓄(ローリングストック)に適しています。

災害用浄水器の利用

水の備蓄が難しい場合は、災害用浄水器という選択肢もあります。雨水やお風呂の残り湯もろ過して飲料水に出来るというのが売り文句ですが、性能は本当にピンキリなので注意が必要です。

健康に直接影響のあるものなので、安さ重視で選ばず、信頼ある日本製で自治体などにも納入実績のあるものを選ぶとよいでしょう。
災害時に万一にも健康被害などあれば、平時よりも影響がはるかに深刻ですから。

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生活用水の備蓄も忘れずに

ここでは飲料水の備蓄に焦点を当てて紹介してきました。

飲料水のほか、清掃や洗い物などに使う生活用水も必要です。
こうした生活用水の備蓄量には、実は正解はありません。多ければ多いほど良いのですが、現実的には宅内に何百Lも備蓄できないので、他の工夫が必要です。

詳しくはこちらの記事を御覧ください:
災害時の断水を生き延びよう!生活用水の確保は普段の準備から
【防災士が解説】雨水貯水タンクで災害時の断水に備えよう!設置手順と実際に使ってみた感想

まとめ

いかがでしょうか。ここでは、直接飲んだり調理に使用するための飲料水の備蓄について解説してきました。

筆者としては、成人1名あたり、4日分として12Lをお勧めします。
我が家は4人家族ですので、人数分の48Lを様々な場所に分散して備蓄しています。
今日から、あなたの家庭でも水の備えを少しずつ始めてみませんか?


あわせて読みたい:
その備蓄で大丈夫?今すぐ始めるべき正しい災害備蓄の方法

ABOUT ME
もげら47
自衛隊で大型輸送ヘリの機長として15年勤務。震災や林野火災など多数の災害派遣に出動。|その後、消防防災航空隊に転職し、消防防災ヘリの機長として10年以上にわたり山岳救助や空中消火活動に従事。|次いで2年間、地方自治体の防災課で防災関連の事務事業を推進するなど、防災一筋の人生。|現在はこうした経験を活かし、防災士ブロガーとして防災関連の情報を発信しています。|【保有資格】防災士・事業用操縦士(回転翼機+飛行機)・航空無線通信士・乙種第4類危険物取扱者・他| ■記事に登場する「わからんこ」や「ちびもげら」って誰? ■キャラクター紹介はこちら