どうも!Mogera47です!
自衛隊で15年、防災航空隊で10年、自治体の防災課で2年、と災害対策一筋でやってきた防災士です。
災害が起こるとよく停電するよね
でも電気自動車とか太陽光発電って、停電で役に立つのかなあ
それぞれ個別に持っていても停電にはあまり役には立たないね
けれども太陽光発電、電気自動車とV2Hを組み合わせると最強だよ
災害で電気が使えなくなると大変ですよね。そうした停電への備えとして太陽光発電システムが真っ先に頭に浮かびますが、これ単体では片手落ちです。本記事では、太陽光発電システムの機能を最大限に発揮する、EV(または家庭用蓄電池)とV2Hについて解説します。
はじめに
近年、自然災害が頻発する中で、停電時の電力確保は重要な課題となっています。そんな中、
「太陽光発電」
「電気自動車(EV)」
「V2H(Vehicle to Home)」
の組み合わせが注目されています。
これらを活用することで、停電時でも家庭に電力を供給できるといわれていますが、実際のところ、どうなのでしょうか?また、家庭用蓄電池とEVではどちらが有効なのか?この記事では、それぞれの仕組みやメリット・デメリットを解説します。
結論から言って、生活スタイルにもよりますが「太陽光発電+EV+V2H」の組み合わせが最強だと言えます。
なぜなら筆者の自宅ではこの組み合わせを導入し、その利便性を実感しているからです。
以下に、これらのシステムがどのように連携し、災害時に役立つのかをご紹介します。
なお、わが家の導入事例の詳細は、別の記事で紹介します。
太陽光発電など機器の概要
太陽光発電
太陽光発電とは
太陽光発電システムは、太陽光を電力に変換する装置です。最近多くの住宅やカーポートの屋根に太陽電池パネルを設置した例を目にする機会も多くなりました。

同システムは、太陽電池パネルやパワーコンディショナー(直流から交流に変換したりするための装置)などから構成されます。
太陽光発電の制約
このシステムを使用すれば、太陽光が得られる限りは電気を電力会社から購入することなく自宅で発電できます。
じゃあ停電したときでも自由に家電が使えるってことね?
必ずしもそんな簡単にはいきません。次のような制約があります:
- まず「自立運転」に切り替える必要がある
- 使用できる電源は非常時用に設置された「自立運転用コンセント」(非常用コンセント)に限定される
- 自立運転で使用可能な電力は1500Wまで
- 雲などで日が陰ると一時的に発電量が低下するため、急な電圧低下でダメージを受けるような家電(デスクトップパソコンなど)は繋いでおかない方が良い
導入コスト
因みに、導入コストは年を追うごとに安くなっています。2024年設置の平均値は22.6万円/kWとなっています(資源エネルギー庁 2024年12月 太陽光発電について)。
例えば5kWのシステムを導入する場合は単純計算で113万円ほどになります。
なお、太陽光発電システムの導入には自治体からの補助金が得られる場合があります。
家庭用蓄電池
家庭用蓄電池の概要
太陽光発電システムだけでは、太陽光が不安定な時や夜間には電力が満足に供給できません。そこで必要になるのが「家庭用蓄電池」です。

日中に太陽電池で発電した電力の内使用しなかった余剰電力を家庭用蓄電池に蓄えておくことができます。これがあれば停電時でも家電を使用できます。
家庭用蓄電池の制約
家庭用蓄電池にも制約があります。
それは使用できる回路(要するにコンセント)は「特定負荷」として設定されたものに限定されるということです。停電時でも平常時と同じように家庭内の全てのコンセントでも使用できるようにすることを「全負荷」と言いますが、そのため工事費用は「特定負荷」に比べて高額になります。
導入コスト
一方、蓄電池の本体価格は、容量、メーカーによって異なりますが、相場は概ね次のとおりです。
更にこれに設置費用が20~30万円がかかります。
蓄電池容量 | 価格相場 |
5.0kWh | 80万円〜120万円 |
6.4kWh | 90万円〜140万円 |
7.0kWh | 95万円〜145万円 |
7.5kWh | 105万円〜155万円 |
8.0kWh | 120万円〜180万円 |
コストが気になるのであれば、ポータブル電源という方法もあります。
災害に備えよう!停電対策完全ガイド ポータブル電源は役に立つのか!?
家庭用蓄電池の機能
蓄電池だけで家庭内電力を負担するとして、どれくらいの時間使用できるのでしょうか。
単純な計算ですが、たとえばエアコンを平均2kWで運転したとすれば、7kWhの容量の蓄電池であれば大まかには3時間余りといったところ。
電気自動車(EV)

EVの概要
EVは大容量のバッテリーを搭載しており、移動手段としてだけでなく、「走る蓄電池」としても活用可能です。
ただし、家庭用蓄電池と異なり、EVから直接家庭に電力を供給することはできません。
そこで必要になるのが、次に述べるV2H(Vehicle to Home)です。
V2H
EVから家庭に電力を供給するにはV2Hを経由させる必要があります。
V2Hは、EVのバッテリーを家庭の電力として利用でき、また、太陽光発電システムからV2Hを介してEVに充電することも可能です。要するにV2Hは太陽光発電システムとEVの中間に立って電気の流れを双方向にするための装置です。

家庭用蓄電池 vs 電気自動車(EV)
家庭用蓄電池か、EVか、というのは迷うところだと思います。
そこで、これら2つをいくつかの観点で比較してみます。
家庭用蓄電池 | 電気自動車(EV;V2H利用) | |
バッテリー容量 | 5〜15kWh程度 | 20kWh〜100kWh |
可搬性 | 固定設置(持ち運べない) | 充電ステーションに行けば再充電可能 |
導入コスト (補助金利用時) | 100万円〜200万円 | EV本体 200〜1,000万円 V2H機器 85~150万円(設置費用込み) |
停電時の持続力 | 1日〜2日程度 | 3日〜1週間程度(車種による) |
エネルギー単価(円/kWh) | 13~20万円/kWh | 11~14万円/kWh |
維持費 | ほぼゼロ | ガソリン自動車未満 |
なお、上の表では補助金を考慮に入れていません。
国や自治体では各種補助金を準備しているので、これら機器の導入は補助金を使うのが基本です。
コストだけで比較するのは中々困難ですが、強いて言うならEVに軍配が上がるでしょう。
何よりも、EVの方が家庭用蓄電池よりも電池容量が大きい上、しかも走行機能がついているので、その点は単純なコスト比較では表出してこないメリットと言えます。
自動車としての品質を求めるのであれば車両本体価格はどこまでも上がっていきますが、「蓄電池」としての機能に特化するのであれば日産サクラで200万円、リーフの500万円程度が上限と見てよいでしょう。
自動車は家庭用蓄電池と異なり維持費がかかりますが、既存の自家用車をEVに置き換えるのであれば維持費はむしろ安くなるためEVが有利に働きます。
電気自動車(EV)の特徴を知る
家庭用蓄電池との比較をするために、今度は移動手段として見た場合のガソリン自動車を基準とした電気自動車のメリットとデメリットを列挙してみます:
EVのメリット
EVには、ガソリン自動車にはない次のようなメリットがあります:
- ガソリン代がゼロ
- CO2を排出しない
- 走行音が静かでエンジンの振動もなく加速に継ぎ目がなくスムース→上質な乗り心地
- エネルギー効率がガソリン自動車の4~6倍
- 構造が単純(トラブルポイントが少ない)なので壊れにくいし、ガソリン自動車に比べてメンテナンスが大変楽(※)→維持費が安い
- 制動に回生ブレーキを使用するため、ブレーキパッドの消耗も少ない
- 電池を床下に配置するため重心が低く、乗り心地が良い
- 自宅で充電できる(ガソリンスタンドに行かなくても良い)
- 短距離の繰り返し走行、いわゆる「チョイ乗り」を気にしなくて良い(ガソリン自動車だと8km以下の繰り返し走行は「シビアコンディション」と言われ、部品やオイルの劣化を心配しなくてはならない)
- 災害時でも太陽光で充電できる(災害時はガソリンの供給自体がストップすることがある)
※ガソリン自動車の場合は次のようなメンテナンスが必要:
・エンジンオイル、ミッションオイル、ATFなどの油脂交換
・点火プラグ、オイルフィルターエレメント、エアクリーナーエレメントなどの消耗品交換
・排気ガス点検
デメリット
- 航続距離が短い(電池容量によるが、電池容量が大きければ本体価格が高くなる)
- (給油に比べて)充電に時間がかかる上、充電スタンドも少ない
- 車両本体価格が高い(補助金制度が必要)
- 電池が劣化したらリセールバリューが著しく低下する
EVの適否は生活スタイルに大きく依存
EVを充電スタンドで充電することを前提にするとEVはデメリットの方が目立ってきます。
逆に、EVは太陽光発電と組み合わせたときに、上に書いたようなメリットを大きく引き出せます。
このように、EVか家庭用蓄電池のどちらが適切かは、生活スタイルと太陽光発電との組み合わ方によって変わってくるため、コストだけではなく将来も見据えて生活スタイルを良く考えて選択すると良いでしょう。
次に、家庭用蓄電池かEVの選択をする場合の考え方について見てみます。
家庭用蓄電池がおすすめの人
- 自動車を2台所有することが困難で、かつEVをメインカーとして利用できない場合(=上述したデメリットが受け入れられない)
- EVを日中通勤で使用したい場合(太陽光での充電ができない※)
※太陽光でなくても深夜電気を使って安く充電する方法はあります。しかしながら本記事では災害への備え=停電対策が主眼なので、ここでは深夜電気の利用については論じないこととします。
EVがおすすめの人
- メインカーは別にあって、EVをセカンドカーとして運用することができる場合
- 通勤は公共交通機関や自転車という人で、EVは週末の買い物やその他雑事にしか使用しない場合
- もともとガソリン自動車のセカンドカーを所有していて、近場でチョイ乗りにしか使用していない場合(このセカンドカーをEVに置き換える)
停電時に使用できる家電
EVにせよ、家庭用蓄電池にせよ、そのバッテリー容量によりますが、冷蔵庫・照明・スマホ充電などの基本的な家電は数日間稼働可能です。
大容量ならエアコンやIHクッキングヒーターも使用可能です。
実際の導入事例
いくら役に立つと言われても、やはり気になるのは実際のコストと使用実感ではないでしょうか。別の記事でわが家の導入事例を紹介しています(執筆中)。
まとめ
太陽光発電+電気自動車+V2Hを組み合わせることで、災害時の電力供給が可能になります。
特に、この組み合わせは災害時の電力供給だけでなく、電気代削減にも寄与します。初期投資は必要ですが、補助金の活用や長期的な視点でのコスト削減を考慮すると、導入の価値は十分にあります。
現在、多くの自治体で補助金制度もあるため、導入を検討している方はチェックしてみるとよいでしょう。
あなたの家庭でも、災害に強いエネルギーシステムを構築してみませんか?