停電よりも、断水がつらい理由

――水が使えないと、生活はどこから詰まるのでしょうか
停電は、ある程度想像がつきます。部屋が暗くなり、テレビやエアコンが使えなくなる。
懐中電灯やモバイルバッテリーを思い浮かべる方も多いでしょう。
一方で、断水についてはどうでしょうか。
「水が止まると困る」ということは分かっていても、水が飲めなくなる以外に具体的にどんな場面で、どれほど困るのかは、意外と想像しにくいものです。
実は、災害時にじわじわと効いてくるのは、「飲み水がない」こと以上に、水が使えない生活そのものだったりします。一つひとつは我慢できても、それが“積み重なって戻らない”ことに気づき始めます。
朝、生活がいきなり止まります
もし、断水していたらどうなるでしょうか。
朝起きて、顔を洗おうとします。が、栓をひねっても、蛇口から水は出ません。
トイレを使って、流そうとして気づきます。
「あ、水が使えないんだった」。
手を洗おうとしても、水がないのでそれも無理。
このように生活の最初の動作でつまずきます。
この時はじめて、水は「特別なときに使うもの」ではなく、無意識に使えることが前提で、生活が成り立っているということに気づかされます。
昼、ストレスが少しずつ積み重なります
時間が経つにつれ、不便は少しずつ神経を削ってきます。
手をきれいにしようにもウェットティッシュで拭く他ありませんが、スッキリしません。
使った食器も洗えない。洗濯もできない。
トイレは準備しておいた「非常用トイレ」で用は足せますが、断水解消までに備蓄量で足りるのか心配になってきます。それに排泄物の入ったゴミ袋が増えていくのも気になります。
水は、何かを「作るため」だけでなく、汚したものを洗い流し、生活をリセットする役割を
担っています。
その仕組みが止まると、生活は少しずつ、確実に詰まり始めます。
夜になっても疲れた体をリセットできません
水が出なければ、もちろんお風呂にも入れません。
真夏、シャワーで汗や汚れを流せないのは、なかなかつらいでしょう。
ウェットティッシュで体を拭くことはできます。
しかし、それはあくまで応急的な対応で、水の「代わり」にはなりません。

照明には懐中電灯やランタンがあります。
調理にはカセットコンロがあります。
しかし、水は日々の生活で頻繁に使うのに完全に代替できるものはありません。水が必要なところには、やはり水なのです。
この停電やガスの停止との差が、断水を「想像以上につらいもの」にしています。
そして、断水した地域には給水車が支援に来てくれるでしょうが、災害の規模が大きくなれば、すぐに支援が得られるとは限りませんし、その頻度も十分ではないかもしれません。

実際の災害でも、「断水」は最後まで残りやすい
こうした状況は、想像の話ではありません。
過去の大規模災害を見ても、水道は他のライフラインに比べて、
復旧までに時間がかかる傾向があります。
たとえば、2011年の東日本大震災では、電気は比較的早い段階で復旧が進みましたが、
水道については広い範囲で断水が続きました。
日本水道協会による給水支援は、発災からおよそ5か月間にわたって行われています。
その間、多くの地域で給水車にに頼らざるを得ない生活が続きました。
(出典:公益社団法人日本水道協会 地震等緊急対応の手引)
また、2024年の能登半島地震でも、地震の影響で水道施設や配水管が大きな被害を受け、
断水は能登北部を中心に長期化しました。このときも、日本水道協会による給水支援は、約5か月間続いています。(同)
水道が完全に復旧するまで、被災地では給水車による支援を受けながら生活を続ける状況に置かれました。
最も代替がききにくいにもかかわらず、最も長く生活に影響し続ける可能性があるのが、水道なのです。
水は「飲むため」だけのものではありません
水は、飲むために欠かせません。それは間違いありません。
ただ、実際の生活ではそれ以上に、
- 汚れを洗い流す
- 食器を片づける
- においや不快感をリセットする
といった役割を、当たり前のように果たしています。
そのため断水は、命の危険という話になる前に、生活の質を一気に下げてしまいます。
だから、少し立ち止まって考えてみてほしいのです
断水対策というと、まず「飲み水の確保」を思い浮かべる方が多いと思います。もちろん、それはとても大切です。
ただ、水が使えなくなったときに本当に困るのは、飲むこと以外の場面だったりします。
私は、「生活用水」をどう考えるかが、断水対策の分かれ目になると感じています。
具体的な生活用水の確保の仕方については、こちらの記事をご覧ください:
→災害時の断水を生き延びよう!生活用水の確保は普段の準備から
→【防災士が解説】雨水貯水タンクで断水に備える!設置方法と使った感想

















