子どもも生まれたし、そろそろ家を建てたいなって思ってるんだ
ほう、それはおめでとう!で、どこに家を建てるの?
それが何を基準にどうやって決めたら良いか分からなくて
一回家を建てちゃったらもう簡単に移動できないから、なかなか決められないよね
家を建てる場所って、とても難しいですよね

利便性や地価など色々な観点もとても重要です。どこに住むかを決めることは、その後の人生を大きく左右する重要な分岐点です。
では、どの観点を優先するのか、という話になります。
結論から言いますが、何よりも重要な観点は「災害に強いこと」ではないでしょうか。
なぜなら、どんなに住みよい街でどんなに便利な所でも、災害で家が無くなったり、命に関わるような事態に陥れば何もかも台無しですから。
この記事を読めばどうやって災害に強い土地を探すかが分かりますよ。
まずは一般的な立地のチェックポイントを押さえよう
一般的には次のような観点で、土地選びをするのではないでしょうか。
- 利便性(通勤・通学 等)
- 生活のしやすさ(スーパー・病院・役所などのアクセス 等)
- 周辺環境(騒音・治安・日当たり・将来の開発計 等)
- 治安(街灯の有無、落書きや放置自転車の有無
でも、一番大事なのは「災害リスク」!災害で家が壊れたらすべてが台無しに
家を建てる場所選びには数多くの観点がありますし、その中で何を重視するかは人それぞれの価値観の問題ですから、一概に「選び方の決定版」を決めることはできません。しかし、せっかく建てた家が壊されるとか家族の生命が危険にさらされることは許容できないのではないでしょうか。
住んではいけない?「要注意エリア」の見極めにはハザードマップを活用しよう
これから土地探しをする方はもちろん、すでに土地をお持ちの方も、ご自分のお住まいにどのようなリスクがあるかを把握しておくことは決して無駄にはなりません。
そこで便利なのが「ハザードマップ」。これは災害が想定される区域を示した地図のことで、市町村は住民に公表することが法により義務付けられているものです。
重ねるハザードマップ
ハザードマップはどうやって見ることができるのか?実は簡単に見ることができます。
それが国土地理院が公表している「重ねるハザードマップ」です。ここでは国や都道府県の関係各機関などが作成した災害リスク情報等をまとめて手軽に閲覧できるようにしています。

わがまちハザードマップ
市町村が公表している元データは、こちらから手軽に閲覧することができます。
土地選びで後悔しないためのチェックポイント
ご存知の通りわが国は災害大国です。こちらの記事でも紹介しています:
災害大国日本。ここに住むならどんな災害があるのか知らなきゃ話になりません!!
土地選びで「こんなはずじゃなかった」と後悔したくはないですよね。
ここでは、ハザードマップの確認と現地踏査を通じ、その土地におけるそれぞれのリスクをどう見積もるかを解説します。
川や海の近くは大丈夫?洪水・津波リスクを見極める
川の近くは洪水、海の近くでは高潮と津波がリスクになります。ハザードマップでは次に着目してその土地のリスクを見積もります。
洪水・内水
洪水
洪水浸水想定区域には、「計画規模」と「想定最大規模」の降雨により浸水することが想定される区域及び水深想定の二種類があり、意味はそれぞれ次の通りです:
✓計画規模:河川整備において基本となる降雨(L1)
✓想定最大規模:想定し得る最大規模の降雨(L2)。1000年に1回程度の割合で発生する降雨量を指していますが、もちろんこれは1000年に1回ずつというインターバルを示したものではなく、年間を通じて僅かながら発生する可能性があることを意味しています。
内水
「内水氾濫」による浸水深を示しています。
「内水氾濫」とは、排水能力を超えた豪雨が降った場合に、下水道・用水路・マンホール・小川などから水があふれ出す現象です。これに対し、例えば河川の水が溢れ出すことを「外水氾濫」と言います。
津波
津波の浸水想定は、「浸水域」と「浸水深」が最大となるよう、最も厳しい条件を想定して作成された想定図がハザードマップで表示されます。
山や崖のそばは要注意!土砂災害のリスクを見極める
わが国は山岳が多く、その分土砂災害のリスクが高いと言えるので、こちらも必ずチェックしておきましょう。

因みに、令和5年1月から12月の1年間に土砂災害は1,471件発生していて、しかもこの40年では、豪雨の増加に同調するように、土砂災害の発生件数は増加傾向が見られています(国交省 「土砂災害の現況について(R6.7.31)」より)。また、土砂災害は豪雨だけでなく地震によっても発生します。
これを踏まえたうえで、ハザードマップで土砂災害のリスクを見るには次の2つの区域の意味を理解しておくことが必要です。

土砂災害警戒区域
その名が示す通り、土砂災害が発生しやすいとされた場所です。しばしば、急傾斜の土地が指定され、ハザードマップでは黄色で表現されるため「イエローゾーン」と言われ、ハザードマップを見れば分かる通り、ほとんどの山沿いの場所は黄色に塗りつぶされています。
この区域内では住宅の建設が禁止されているわけではありませんが、ここでは大雨で地盤が緩んでその地域における土砂災害の危険度が高まったと判断されれば、市町村長が同区域内の住民に対し「避難指示」を発令します。指示に従わず避難しなかったからと言って罰則規定はありませんが、本当に土砂災害が発生した場合に最も損をするのは自分ですから、遅滞なくこれに従うべきです。
もちろん、幸いにして土砂災害が発生しないケースの方が圧倒的に多いのですが、そういう土地に住むということは、その都度避難することになるのみならず、そして最悪の場合家が土砂崩れで潰されるということも覚悟しなくてはなりません。
土砂災害警戒特別区域
土砂災害警戒区域の中でも特に著しい危害が生じるおそれがある区域として,住宅等の新規立地の抑制等を目的として指定されます。通称「レッドゾーン」といわれます。
この区域内では住宅宅地分譲や住宅建設に制限があります。要するにそれだけ危険だと認識されているからです。土砂災害警戒区域と同じように避難指示が発令されればその都度避難しなくてはなりません。
よって、わざわざそのような危険な場所に様々な許可申請をしながら苦労して家を建てるだけの理由はないと言えます。
「液状化」リスクも要チェック!
「液状化」とは、水分を含んだ土砂が地震によって振動を与えられると、液体のようにドロドロになることをいいます。地盤が液状化すると建物が沈んだり傾いたりします。

液状化リスクは、こちらのサイトで災害種別で「地盤被害(液状化)マップ」を選択すれば確認できます:わがまちハザードマップ
液状化しやすい土地には共通点があって、次のような特徴があります:
埋め立て地や川の近く
昔、海や川だった場所を埋め立てた土地は、地盤がしっかり固まっていないことが多いです。川のそばは砂がたまりやすく、水分も多く含んでいるので、簡単に液状化します。

田んぼや湿地だった場所
昔、田んぼや沼地だったところは、土が柔らかく水をたくさん含んでいることが多く、地震で泥水が湧き出してきます。
砂地やゆるい地盤
砂浜のように、砂が多い土地は粒がバラバラで、地震の振動で簡単に動いてしまいます。
地下水が近い
地面の下に水がたくさんあると、地震の揺れで砂と水が混ざり、ドロドロになりやすい傾向があります。
都市部の危険性とは?火災・密集地リスクを見極める
住宅が密集した場所の危険性とは
どれだけ自分の家の耐震性を高めても、隣家と密接していて、その隣家が古い耐震基準で建設されていた場合は、地震が発生したときに共倒れになってしまうかも知れません。その上、倒壊した隣家から火災が発生すればたちまち延焼してしまいます。

木造住宅には「耐震基準」が設定されています。
- 1981年まで:旧耐震基準
- 1981年以降:新耐震基準
- 2000年以降:2000年耐震基準
耐震基準については、次の記事をご参照ください:
「もっと備えておけば…」と後悔しないために!防災のプロが厳選する本当に必要な地震対策
当然ですが、古い耐震基準で建築された住宅は、最新の住宅に比べて耐震強度は低いです。
土地を選ぶ際はこうした点にも着目し、実際に歩き回って自分の目で確かめることがとても重要です。
周辺住宅の築年数に着目
国土地理院が運営している「地図・空中写真閲覧サービス」では、年代ごとに撮影した空中写真を閲覧することができます。

これで建物が同定できれば、1981年に制定された新耐震基準より前の建物かどうかは概ね把握できます。ただし、その後耐震補強工事を行っている場合もあるので、新耐震基準以前の建物だから一律「危険」とは限りません。
道路の幅にも注目
元々建設基準法では、住宅を建てるにはその敷地が道路に2m以上接していなければならないという「接道義務」があります。これは住民の避難と緊急車両のアクセスを考慮した規定ですが、法律の規定だけではなく、消防車両や救急車がスムースにアクセスできるかどうか、実際に自分の目でチェックしてみましょう。
また、地震で周囲の住宅が多数倒壊すれば更に車両のアクセスが困難になり、消火・救助活動の妨げとなるので、住宅密集地で道路が狭い場所はそれだけ脆弱と言えます。
家を建てずに賃貸や集合住宅に住む方法も
そんなに制約が多いと土地なんか選べないよ!
平野部は洪水に液状化、海沿いは津波、山沿いでは土砂災害、都市部だと隣家との距離?
もう!どこに家を立てりゃ良いのさ!
そういうのも無理はありません。国土は狭いし、災害が多いのがわが国の特徴ですから。
それに土地選びには防災上の観点以外にも数多くの条件を考えなくてはなりません。予算の問題もあります。
なので、いい土地が見つかるまでは鉄筋コンクリート構造の「集合住宅」に住むという方法もあります。
鉄筋コンクリート構造であれば地震による倒壊の危険はぐっと小さくなりますし、2階以上であれば、土砂災害や洪水被害の心配も減ります。
ただし、エレベーターが必要なくらいの高層階では、停電時の上り下りができなくなったり、断水時のデメリットもありますが…それはこちらの記事でも紹介しています:
ただ、賃貸であれば持ち家と違って引っ越しの敷居が低いことは一つのメリットですし、また、万が一災害で建物自体が損傷を受けたとしても、自分の建てた家でなければショックも小さいのではないでしょうか。
まとめ「安全な土地」は未来の安心をつくる
ここでは、家を建てる土地選びについて解説してきました。
土地選びので何よりも重要な観点は「災害に強いこと」だと思います。
災害リスクはハザードマップで調べましょう。ある程度目星がついたら、実際にその土地を歩き回って自分の目で災害リスクを見つけ出すことがとても重要です。
良い場所が見つからなければ、焦ることなく賃貸などに住んで、探し続けるという方法もあります。何よりも、死んでしまったら元も子もありません。
根気よく探せば、きっといい土地が見つかりますよ。