はじめに

台風が近づいてるって、ニュースで見たよ!
でも「うちも備えないと」と思っても、具体的に何をすればいいのかわからないんだよね。
毎年のように大きな台風がやってきては大きな災害をもたらしているから、ちゃんと備えた方が良いのは確かだよね。
はい、そうです。
けれども、前触れなく襲ってくる地震と違って、台風は数日前から進路や規模が概ね正確に予測できるから、しっかりと備える時間があるというのが特徴です。時間を有効に使って、被害を減らしましょう。
この記事では、防災士であり行政での防災経験も持つ筆者が、家庭でできる台風対策を5つの柱に整理しました。難しいことではなく、「やると効果が大きい準備」に絞って紹介します。
まずは何よりも「命を守る準備」
ハザードマップで自宅の危険を確認
まずは「自宅がどんな災害リスクを持っているのか」を知ることから始めましょう。洪水、土砂災害、高潮――自治体が配布しているハザードマップを見れば一目で確認できます。
ここをチェック!:重ねるハザードマップ
上記リンクや、お住いの市区町村HPでも閲覧できますが、災害が切迫するとアクセスが集中して見られなくなることがあるため、ハザードマップは「紙に印刷されたもの」で手元に保管しておくことをおすすめします。
紙のハザードマップ?そんなものどこにあるの?
普通、市町村役場から配布されているはずだよ。
え?もしかして捨てちゃった?
ハザードマップが手元になければ、ネットでダウンロードして印刷するか、市町村役場にもらいに行けば入手できます。余裕のある時に準備しておきましょう。
避難判断のポイント
行政が出す避難情報を待つ必要はありません。実際に避難するかどうかは、あなた自身の判断が不可欠です。「キキクル(危険度分布)」などの最新情報を確認しながら、周囲の状況に応じて避難を検討してください。
「自分の命は自分で守る」が基本です。
なお、避難は必ず明るいうちに、徒歩で行うのが基本です。
家の中でやるべき備え
窓ガラスの飛散防止
台風で多い被害のひとつが、飛来物による窓ガラスの破損です。割れたガラスで室内に風雨が吹き込み、被害が拡大することもあります。

雨戸がある場合は、風が強くなる前に雨戸を締め切っておきましょう。
雨戸がない場合は、飛散防止フィルムを貼っておくと良いです。
私は主に地震対策として自宅の窓に飛散防止フィルムを貼り付けましたが、施工後は安心感が全く違います。フィルムが難しければ、厚手のカーテンを閉めておくだけでも(多少は)効果があります。
停電対策
照明
停電に備えて懐中電灯やLEDランタンを用意しましょう。
ろうそくは電気も使わないし故障がない反面、光量も少なく火災の危険があるため、停電時の照明としては完全に時代遅れです。風で吹き消えるので野外に持ち出せません=避難にも使えません。
スマホのライト機能を使えば良いんじゃない!?
確かにそうだけど、照明は専用のLEDライトを準備することを強くおすすめするよ!
それは、災害が発生した時、スマホは情報収集や連絡手段として多用するのでバッテリーを温存しておくためです。特に、停電するとwi-fiが使えなくなってモバイルデータ通信になるから余計にバッテリー消費が多くなります。
冷蔵庫+冷凍庫の準備
PETボトルに水を入れて凍らせておくと、停電した場合でもそのまま保冷剤になりますし、溶ければ冷水としてそのまま飲用に使えます。
保冷剤で良くない??
駄目じゃないよ。
ただ、保冷剤は溶けたらそれで終わりだけど、PETボトル+氷水なら溶けたあともよく冷えた飲料水としても使えるから断水対策と熱中症予防にも使えるよね。
その他の停電への備えはこちらをご覧ください:
→停電に備えるには?今すぐできる“常識的な備え”と意外な落とし穴
断水への備え
過去の台風では停電の影響で浄水場やポンプが停止し、数万世帯規模の断水が発生しました。飲料水は一人1日3リットルを目安に、少なくとも4日分を備えておきましょう。

断水への備えはこちらをご覧ください:
→【災害用の水は何リットル必要?】家族の人数×日数でわかる備蓄量と保存のコツ
また、災害時に最も困るのがトイレです。
もし断水すれば水洗トイレは使えません。簡易トイレも準備しておくと良いでしょう。
→災害時のトイレ問題を完全解決!在宅避難で困らないための備えとは?
外回りの点検
強風や大雨に対する備えを済ませておきましょう。
飛びそうなものを収納
ベランダや庭にある植木鉢、物干し竿、ゴミ箱など、強風で飛ばされそうなものは室内に移動させましょう。

車の移動と給油
低い土地など浸水が想定されるエリアでは、あらかじめ車を安全な場所に移動しておきます。
これも上で紹介したハザードマップである程度予測がつきます。

また、災害後はガソリンが入手困難になることが多いため、台風接近前に満タンにしておくと安心です。
雨どい・排水溝の掃除は余裕を持って
よく「台風接近前に雨どい掃除を」と言われますが、これはもっと前に、つまり台風シーズンに入る前の時間に余裕のあるときに済ませておくものです。
雨どいが詰まっても実害はありません。ましてや命に危険があるわけではないので、台風直前に慌てて高所作業で危険を冒す必要はないと思われます。
それよりも優先度の高い準備を先に済ませましょう。
家庭の備蓄の再点検
食料と水は普段から最低4日分は備えておきましょう。
備える、といっても非常食を買いだめしておく必要はありません。
普段から食材を多めに買っておいて、備蓄しながら消費していくローリングストックがおすすめです。
なお、台風接近とともに、食料品を買い出しに行く人が増えるのでお店が混雑するかもしれません。早めの行動が大切です。
ただし、停電で冷蔵庫が使えなくなることも想定して、傷みやすい生鮮食品は買いすぎないようにした方が無難です。
あわせて読みたい:
→その備蓄で大丈夫?今すぐ始めるべき正しい災害備蓄の方法
また、浸水が心配な場合は非常食も2階に上げておくなど保管場所にも気をつけると良いですね。
あわせて読みたい:
→非常食の保存場所はどこが正解?災害リスクに応じたベストな備え方を解説
気象資料の確認方法をおさらい
台風は予測できる災害だからこそ、気象資料の確認方法を事前におさらいして情報の感度を高めておくと適切な行動に役立ちます。
以下に、ぜひ確認しておきたい気象資料を紹介します。
台風情報
定番中の定番です。気象庁のHPでは最新の台風の位置と予想進路を見ることができます。

雨雲の動き
ほぼリアルタイムの雨雲(実際は雨粒)の様子を見ることができるので、数分から数十分単位での行動判断に役立ちます。
雨の強さに応じて色分けされていて、時間経過に合わせ動かすこともできます。

今後の雨
「雨雲の動き」よりはもう少し先、数時間単位での雨の降り方が予測できます。

キキクル
災害の危険度分布を色分けで把握できます。
土砂災害、短時間の集中豪雨による浸水、河川の氾濫、洪水の3つのリスクをそれぞれ表示することができ、避難のタイミングを図るのに使用します。実際、自治体はこのキキクルの情報を使って避難情報を発出しています。

台風のリスクは陸地だけではない
台風が接近してくると、海沿いでは高潮も大きなリスクです。

高潮は…
- 台風などの低気圧部分に向かって海面が吸い上げられる「吸い上げ効果」
- 陸地に向かって吹く強風によって海面が上昇する「吹き寄せ効果」
などの組み合わせによって、普段よりも海面が上昇し堤防を越えてくる現象です。

これらに加え、強風によって波が高くなるため、波が堤防を乗り越えて陸地に入り込んでくることで浸水被害をもたらします。満潮の時間と重なれば更に潮位が上がります。


おわりに:国からのメッセージに学ぶ
「平成30年7月豪雨を踏まえた水害・土砂災害からの避難のあり方について」には、次のような呼びかけがあります。
「行政は万能ではありません。皆さんの命を行政に委ねないでください。避難するかしないか、最後は『あなた』の判断です。」
「まだ大丈夫だろうと思って亡くなった方がいたかもしれません。河川の氾濫や土砂災害が発生してからではもう手遅れです。」
台風は予測できる災害であり、備える時間があります。その時間を有効に使うかどうかが、家族を守れるかどうかを分けるのです。
今年の台風シーズン、できることから一つずつ取り組み、家族を守る備えを始めましょう。