どうも!Mogera47です!
自衛隊で15年、防災航空隊で10年、自治体の防災課で2年、と災害対策一筋でやってきた防災士です。
日本は地震、台風、水害など自然災害が多い国であり、災害後はライフラインが停止し、物資の供給も途絶える可能性があります。そのため、事前に備蓄をしておくことが重要です。
…ってよく言うよね?でも何をどれだけ備蓄したら良いんだろう?
そういう疑問はもっともだ
災害に備えるのはとても大事だけど、何も考えず、むやみやたらと食料を買い貯めするだけじゃだめだよ
ここでは、災害への備えのひとつとして、備蓄について解説します。これを読めば、備蓄の考え方から、何をどれだけ備蓄しておけば良いかまでが分かりますよ!
備蓄より大事なのは「生き残る準備」
備蓄は大切、でもまずは命を守る対策を
「もしも」のために備えても、命を落としたら備蓄品も無駄になります。まずは「死なない」「怪我をしない」ことを最優先に考えましょう。例えば地震であれば耐震化や家具の固定などの準備が最優先です。

詳しくは、こちらをご覧ください。
「もっと備えておけば…」と後悔しないために!防災のプロが厳選する本当に必要な地震対策
備蓄は在宅生活を継続するときだけ有効
備蓄は災害後も自宅で過ごすことができる場合にのみ有効です。自宅にとどまることで危険にさらされるのであれば躊躇なく避難しなくてはなりません。避難についてはこちらを御覧ください:
したがって、この記事では、災害後も幸いにして在宅生活を送ることができるということを前提としています。
災害後に「買いに行く」はNG!普段から備えておくべし
災害が発生すると、店は大混雑・品薄に
大きな地震が発生すると一斉に買い出しに走る人が多くなるので品薄になり、その商品を本当に必要としている人に行き渡らなくなります。しかもこの現象、被災地はもちろん、被災地から遠く離れた場所でも発生します。詳しくはこちらをご覧ください:
地震のたびに買い占め騒動…本当に今すぐ買うべき?後悔しないための防災対策
そもそも外に出ることが危険な場合も!
豪雨などで洪水や土砂災害が予想されるような天候のとき、台風が接近して強風が吹いているようなときに買い出しに行くのは危険です。食料確保のために怪我をしてしまっては本末転倒。
そんなときに無理して外出しなくても済むよう、予め準備しておきましょう。
災害時、すぐに助けは来ない!最低4日は自力で生きる覚悟を
食べ物は行政が配布してくれるんじゃないの?
救援を当てにしてはいけません。 災害対策の基本は「自助」。自らの命は自ら守ることを念頭に準備しましょう。
行政もすぐには動けない現実
お住いの市町村が被災したということは、その市町村職員自身も被災している可能性を考慮すべきです。消防職員や警察官も被災しているかも知れません。実際、阪神・淡路大震災でも多数の職員が被災するかまたは道路が通行できず参集できなかった例がありました。また、東日本大震災では、岩手・宮城・福島の3県だけで約250名の市町村職員が死亡または行方不明になりました(総務省報告)。消防職員や警察官も含めると、さらに多くの人が殉職しており、災害直後は深刻な人手不足に陥りました。

また、庁舎やインフラに被害が発生しているかも知れません。
だから、まずは自らの命は自ら守るという「自助」が重要になるのです。
外部からの供給無しで生き抜く期間とは?
災害の規模が大きくなるほど、外部からの救援開始までの期間は長くなるのが普通です。
多くの自治体では、最低3日間は自らの力で生き抜いていけるだけの準備をするよう勧めています。筆者が勤めていた自治体でもこの3日間をお勧めしてきましたが、筆者はこれにさらに1日をプラスして4日分をお勧めしていますし、自宅でもそれを基準に備蓄しています。
なぜなら、この3日というのは救援物資の供給が開始されるまでの期間の大まかな平均であり、災害の状況によっては大きく変わることがあるので、更に1日分を予備として設定しておけばより確実だからです。
ちなみに政府はこの期間を「3日分、できれば1週間」としています。もちろん多ければそれに越したことはないのですが、管理が面倒になってやめてしまっては本末転倒です。
食料を賢く備蓄する!ローリングストック(回転備蓄)のススメ
「生き抜く」で最初に頭に浮かぶのは食料ではないでしょうか。しかし非常食をどっさり準備する必要はありません。普段の生活で使う食品を多めに買い置きし、備蓄量が4日分以上になるようにしつつ賞味期限の近いものから消費していくのです。この方法をローリングストックと言います。

災害が発生した場合は、まず冷蔵庫と冷凍庫の中の傷みやすい食品で3~4日くらいを乗り切ります。
これに続いて、次に述べるような常温で日持ちする食品を消費していくのです。もちろん生鮮食品とをうまく組み合わせてもOKです。
ストックしておく食料品の例
ローリングストックに向いている食料品には次のようなものがあります。多くはほとんどのご家庭で普段から保存しているものではないでしょうか。要するにこれらを少し多めに買っておくということで、あまり難しく考える必要はありません。
水
飲料水を水道水ではなくミネラルウォーターで購入している場合は、そのまま備蓄になります。
水道水を飲用にしているご家庭では、保存水を購入することになります。
必要な備蓄量など、水の備蓄の詳細についてはこちらをご覧ください。
主食
米、餅、パックご飯、カップ麺、パスタ、うどん(乾麺)、シリアルなど
主菜
魚介、肉類、牛丼のもとなどの缶詰
パスタソース、カレー、丼のもとなどのレトルトパウチ食品
副菜
じゃがいも、たまねぎなど日持ちする野菜
漬物、インスタント味噌汁、野菜ジュースなど
干ししいたけ、乾燥わかめなどの乾物
その他果物、野菜
フルーツ缶詰、野菜ジュース、豆乳など
ローリングストックのメリット
いわゆる専用の「非常食」を何日分も備蓄しておくのに比べて、経費と収納スペースの点でも負担が小さくて済むのが、ローリングストックのメリットです。
長期保存が可能な非常食(アルファ化米など)は結構値が張ります。開発、衛生管理、パッケージにコストがかかるからですね。ただし、もちろんそれらを消費していくというローリングもアリです。
ローリングストックのポイント
賞味期限管理
上手に回転させていく上では、賞味期限管理が鍵です。乾物や漬物など普段から使っているような食品は普段通り消費していくだけなので心配ありませんが、食料品の種類と量が増えれば管理が難しくなります。
そこで、例えば缶詰など賞味期限が長いものは賞味期限ごとに分けて箱に分けて、付箋紙に賞味期限を書いて貼っておくと良いでしょう。
ただし、この分類もあまり細かくすると面倒になって破綻してしまうので、半年から1年ごとに分類しておくと良いです。
ローリングストックは、生きている限りずっと持続していかなくてはならないので、途中で破綻しないことがとても重要です。
種類の管理
例えば乳幼児がいる家庭では、ベビーフードはお子さんの成長に伴って食べるものや量がたちまち変化していくので、賞味期限以外の観点からも計画的に回転させていく必要があります。
食料品はローリングストックだけで大丈夫?
避難する場合の食料は調理不要なものを別途準備しておく必要があります。理由は:
- 避難が必要となったときに非常持出袋にパッキングする時間はない
- 避難先では調理できないことを前提にする
そこで、非常持ち出し袋には、非常食としてアルファ化米、栄養補助食品、飲料水などの非常食(携行食)を別途準備しておく必要があります。もちろんこれら非常食は、ローリングストックで不足した場合の予備に使用できます。
非常持ち出し袋の準備については、別記事で紹介予定です。
これだけは用意したい!防災のプロが選ぶ備蓄品チェックリスト
水・食料の備蓄は分かりました。でもこれだけでは災害への備えとしては不十分です。なぜなら、災害が発生すれば、電気・ガス・水道が使えなくなることが多いからです。また、こうした状況下ではお店も休業しているでしょう。こうした状況に備えて、次のようなものを準備しておきます。
なお、本記事は在宅生活を基準としているので、普段の生活を送るうえで通常家に常備しているようなもの(ラッピングフィルム、歯ブラシ、タオルなど)は記載していません。
停電対策
懐中電灯
避難時にも両手が使えるようヘッドライトがおすすめです。
LEDランタン
携帯ラジオ(手回し式充電装置付き)
予備電池
現金(小銭含む)
停電中はクレジットカードや電子決済が使えません。
スマートフォン用モバイルバッテリー(台数分)
ポータブル電源(定格出力1500W以上)
スマホや医療機器などの電源確保に必要です。
ソーラーパネル
ポータブル電源を充電するためにあると良いですが、購入前に太陽光を十分に集めることができる場所と十分な発電量が確保できることを確認しましょう。
石油ストーブ
石油ストーブは石油ファンヒーターと違って停電時でも使えるし、湯も沸かせます。
携帯用カイロ
真冬に暖房器具がないと体力を消耗してしまいます。
ガス停止対策
カセットコンロ×1
備蓄食料を調理するため必須です。もちろん、普段の鍋料理などでも活躍するので、持っていて無駄になることはないでしょう。
ガスカートリッジ×3~10本
ガスカートリッジは、一箇所に集積しておくと火災時に大変なことになるので分散しておいたほうが無難です。なお、カートリッジにも使用期限があって、通常7年とされていますが、これはゴムパッキンの劣化によるものなので、安全のため消費しながら入れ替えていくべきです。
断水対策
非常用トイレ(最低1週間分以上)
食事は我慢できても、トイレは我慢できません。断水すれば真っ先に直面する問題ですから、必ず備えておきましょう。
紙皿、紙コップ、割り箸
食事はできるだけ洗い物を出さないようお皿にラップを被せて使用すると良いのですが、実際やってみるとラップがズレたりスプーンが引っかかって使いにくい場合があるので、こうした使い捨て食器を併用すると良いでしょう。レジャーやアウトドアにも使用できますね。
折りたたみ式水タンクまたはポリタンク
給水支援が開始されたときに使います。運搬しやすい物を選びましょう。
ボディシート
お風呂は当分お預けになりますが、衛生状態の悪化は健康状態にも悪影響があります。災害時は医療機関の機能も低下するため、病気にならないよう一層注意する必要があります。
ドライシャンプー
スプレータイプのものやウェットシートで髪を拭くタイプもあります。
アルコール消毒液または次亜塩素酸Na水溶液
断水すれば不衛生になりがちです。災害時こそ感染症対策に留意しましょう。
ウェットティッシュ/赤ちゃん用おしり拭き
ウェットティッシュは防災用の長期保存可能なものも市販されています。赤ちゃん用おしり拭きは保存期間は短いですが廉価であり、大きくて使い勝手が良いのが特徴です。
水の問題については、こちらの記事でも紹介しています:
品切れ/店舗休業対策
次のものは、災害が発生すると真っ先に売り切れるか、店舗休業により入手困難となる消耗品です。
トイレットペーパー
乾電池
おむつ
生理用品
ゴミ袋
防災中毒に要注意
災害を真剣に考え始めると「あれもこれも」と揃えたくなるものですが、あまり神経質になって「防災中毒」になって備蓄品を買い込みすぎないように注意しましょう。特に、モノで溢れ返ると避難の妨げになったりして最優先事項である「命を守る」が疎かになってしまい本末転倒です。
そのためには、防災専用品を買い集めるのではなく、普段の生活で使えるものを基本に考えることが大切です。これは要するに「ローリングストック」の考えそのものです。
また、キャンプやアウトドア用品はそのまま防災に使えるものが多いので、購入に走る前にすでに持っているものと機能が重複していないか、今一度確認するとよいでしょう。
定期的な見直し
備蓄は一度やったら終わり、ではありません。定期的に点検しましょう。なぜなら…
- 食料品の賞味期限をチェックしなくてはならない
- 電池は自然放電する
- カイロや次亜塩素酸Naも使用期限がある
- ウェットティッシュは密封していても少しずつ乾燥していく
- 古いガスカートリッジはガス漏れの危険があり使用に適さなくなる etc.
…からです。この際、家族全員で一緒に点検をすれば、どこに何があるかを全員で共有できるし、我が家の防災体制を見直す良いきっかけにもなります。
点検日は、例えば東日本大震災発生の3月11日と、その概ね半年後である関東大震災発生日(全国防災の日)の9月1日、としておけばちょうど半年に1回ずつ点検することになるし、防災意識を高めることができますね。
まとめ
冒頭に述べた通り、最優先すべきは「命を守る環境づくり」ですから、防災用品や備蓄食料で溢れかえって整理が悪くなったのでは、地震発生時に家具転倒の原因になったり避難の妨げになったりして本末転倒です。
備蓄をするにしてもこうしたことを考慮し、バランスを取りながら次のように取り組んでいくとよいでしょう。
- 最低4日分は生き抜けるよう準備
- ローリングストックで賢く無駄なく備蓄
- 停電、ガス停止、断水が発生することを想定
- 災害発生時に売り切れがちな消耗品は普段から多めに備蓄
- 定期的に見直す