日頃の備え

災害時の断水を生き延びよう!生活用水の確保は普段の準備から

地震があると断水するよね。飲料水は備蓄しておくとして、生活用水もやっぱり備蓄しておかないとすごく困るんじゃないの?
といってもどれくらい準備しておけば良いんだろう??

生活用水は多ければ多いほど良いんだけど、何百リットルも準備できないから、「(可能な分だけ)備蓄」と「節水」の両輪で対処すると良いですね。

災害用の水については、飲料水と生活用水は分けて考えた方が整理しやすいです。
本記事では、災害で断水した場合の洗い物をする、手を洗うなどの生活用水の確保について解説します。
飲用や炊事など口にいれることを前提とした飲料水の備蓄についてはこちらを御覧ください。

知らなきゃ損!災害に備えた水の備蓄量はどれくらい?

生活用水は多ければ多いほど良いのですが、だからといって何十Lも何百Lも備蓄しておくのは非現実的です。そこで、生活用水確保に対しては、備蓄節水の両輪で対処します。

備蓄の部

容器に貯めておく

これには決まった量はありません。

なので、収納に余裕のある範囲で、余ったPETボトルやポリタンクの中をよく洗浄し、口いっぱいまで水道水を入れ、冷暗所に分散保管しておくと良いでしょう。

この方法であれば、水道水に含まれる塩素の殺菌作用により、常温で3日、冷蔵庫なら1週間程度は蛇口から出てきた水と同じように扱えます。ただし、直射日光や蛍光灯の紫外線には当てないように注意してください。期限が過ぎた水は雑用水として利用できますが、余りに長期間保管しておくと、ぬめりが出てきたりして不衛生なので定期的に入れ替える必要はあります。

なお、封入の前に煮沸してしまうと消毒の塩素が飛んでしまい却って水の品質劣化の原因になるので、水道水はそのまま入れる、が基本です。

お風呂残り湯を捨てずに取っておく

新しく湯を張る直前まで残り湯を落とさずに取っておきます。

ただし、小さなお子さんがいるご家庭では、溺水事故の危険があるためお勧めしません

また、入浴後の残り湯は翌朝にはすでに雑菌が多く繁殖しているため、トイレを流したり掃除に使う程度とし、手洗いや調理には使わない方が良いでしょう。

雨水貯水システム

賃貸や集合住宅でなければ、雨水貯水タンクを導入する方法があります。

雨水貯水タンク
雨水貯水タンクのイメージ

これは自宅の雨樋から専用のタンクに雨水を貯めていくもので、容量も100~200Lと様々なサイズが販売されています。

雨水貯水タンクの例

普通にバケツに貯めておくだけだと、藻が繁殖し、異物が混入し、ボウフラが湧きますが、専用品では光を通さず虫が入り込めないようになっているので、こうした不具合を抑制できます。また、蛇口が装備されていて使いやすくする工夫がされています。

数万円というコストは掛かるし、定期的な清掃は必要ですが、平時でも庭の水やり、家の前の打ち水、洗車などにも使用できるため導入のメリットは大きいでしょう。

節水の部

入浴

ボディシートやドライシャンプーを事前に準備しておくとよいでしょう。

食器洗い

次のような工夫で食器洗いに使う水を節約するか、あるいは食器洗い自体をせずに済む方法を考えましょう。

  • 食事は調理をしないで済むよう、アルファ化米、フリーズドライ、レトルト、缶詰等を予め準備
  • 食器にラップやポリ袋を被せて使用
  • 耐熱ポリ袋を使った湯せん調理
    ここで作ったお湯は捨てず適度に冷ました後、手や顔を洗うなど別の用途に使用します。
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  • 食器が汚れた場合はウェットティッシュで拭う
  • まな板を使わずに済むよう、キッチンバサミ、ピーラー、スライサーを使用
  • シリコンスプーンを使う
    柔らかく食器にフィットするので、食べ物をきれいにすくい取ることができます。そうすると最後はウェットティッシュで拭うことで綺麗にできます。普段使いでも便利です。
シリコンスプーンは柔らかく食器にフィットするので、食べ物をきれいにすくい取ることができる
シリコンスプーン

洗濯

タオルハンカチや下着類など小物であれば、ジップ袋に洗剤と水を入れてもみ洗いします。

大物の洗濯は諦めましょう。臭いのは自分だけではありませんから、そこは非常事態と割り切ります。

トイレ問題

非常用トイレの準備

断水時はトイレ問題がすぐに顕在化します。入浴、洗濯や食事は我慢できてもトイレは我慢出来ない深刻な問題です。

いざというとき困らないよう、非常用トイレを必ず準備しておきましょう。

手作り非常用トイレはやめたほう良い理由

「市販品がなくてもレジ袋に新聞紙をちぎって入れたもので代用可能」と紹介するメディアや書籍も散見しますが、それは本当に緊急時のみの最後の手段と心得るべきです。

なぜなら、レジ袋では密封性が不十分だし、小さな穴が空くことが多いからです。だから中身が漏れてくることもあります。

そして最も重要なことは、災害時はごみ収集がされるとは限らないということです。そうなると、ごみ収集が再開されるまで自分達の排泄物を自宅内に蓄積していかなくてはなりません。それは大変な臭気を発します。

そのため、消臭剤と凝固剤、密封できる袋を備えた専用品は必須です。ここはケチらずちゃんとしたものを準備しましょう。

その他の方法

庭があるご家庭では、庭に穴を掘って用を足すという方法もあります。その場合はトイレテントを準備しておきまう。非常用トイレにせよ、トイレテントにせよ、いずれも災害が発生してから入手しようとしてももう手遅れです。

なお、災害時のトイレ問題については別記事(今後執筆予定)で詳しく解説します。

給水車から水をもらうときの注意点

さて次は、給水支援が開始された後の話です。

水の運び方

運良く給水車があなたの住む街にもやってきたとします。

そこであなたは、どうやって水をもらいに行きますか?水と言ったらポリタンク?
でもポリタンクを片手に給水車へ向かうのはちょっと待ってください。

ポリタンクだけ持っていくのはおすすめできない理由

ポリンタンクは大量の水を入れることができるので便利ですが、行きは軽くても満水にして重くなったポリンタンクを片手で持って運ぶのは結構な労力です。台車も自動車も、道路が平坦で障害物がないときしか使えません。

そこで次に述べる方法がおすすめです。

おすすめはリュックサックで運ぶこと

リュックサックに入るのなら、ポリンタンクごと入れて持ち運ぶと良いでしょう。
ポリタンクがなければ、2LのPETボトル、防災用給水バッグ、またはゴミ袋を二重にしてリュックサックに入れます。

リュックサックにゴミ袋を二重にし、水を入れると持ち運びが楽
リュックサックにゴミ袋を二重にし、水を入れると持ち運びが楽

リュックサックなら両手は塞がらないので、瓦礫の中を重いポリタンク片手で運ぶよりもずっと楽だし安全です。
PETボトルは備蓄水を消費すれば空きがたくさんできます。
給水バッグは百円均一でも入手できるし、小さく折り畳めるので平時でもじゃまになりません。

バケツを使う場合はこうしよう

もしバケツを利用する場合は、写真のようにゴミ袋を使うと運ぶときに水がこぼれません。ただし、たくさん持ち帰りたいからと大きなバケツを選んでしまうと帰りが大変ですから、体力と相談しながらくれぐれも加減しましょう。

持って帰ってきた水はこうして使おう

ポリタンクを準備するのであれば、蛇口が付いたものを選ぶと使いやすいです。

高層マンションにお住まいの方はここに注意!

最後に、高層マンションなどの集合住宅ならではの注意事項について述べたいと思います。

屋上貯水槽の水は断水後もしばらく使えてしまう

高層マンションなどの集合住宅では、高架水槽(屋上に設置される貯水槽)を使用していることがあるので、その水槽に水が残っていれば水は普通に使えますが、これは良し悪しです。まず、悪い点はすぐには断水に気づけないことです。

屋上貯水槽(高架水槽)には水が溜まっているため、断水してもしばらくは水が使えますが、良し悪しです。
高架水槽の例

良い点は、断水後もしばらく水が使えることですが、これにより地震の後すぐお風呂やポリタンクに水を備蓄し始める人がいるので、これでは早いもの勝ちになってしまい公平性の観点からは問題があります。

なので、予め管理組合のマニュアルなどで非常時の水の使用方法について定めておくことが重要です。

自ら断水に気づくのは困難なので、大きな地震があったら断水したものとみなし、速やかに節水モードに切り替えつつ、情報収集に努めましょう。

その時まだお風呂に湯が残っていれば流さずに取っておいてください。ただし、小さなお子さんがいる家庭では溺水事故にくれぐれも注意しましょう。

停電でも断水!?

高架水槽がある建物では電動ポンプで貯水槽に揚水しています。停電でポンプが停止すればやがて高架水槽の水も使い果たし、その時点で「断水」になります。

高架水槽給水方式は、電動ポンプで揚水するため停電するとやがて断水します。

停電になればエレベーターも停止します。こうなると備蓄水がなくなった後、外部から水を供給するにしても、給電が再開されるまでは自分の手足を使って水を運び上げなくてはならないので、高層階に住んでいる人にとっては大変な苦行になります。

実際、2011年の地震の際、ある高層マンションの16階に住んでいた筆者の知人は、停電+断水のダブルパンチのため、何度かポリタンクに入れた水を持って階段を登ったそうですが、最後は「これでは生活できない」と避難所に移ったそうです。水の問題がなくても高層階でエレベーターが使えないと大変ですね。

高齢だったり障がいがあったりすればなおのこと、生活する場所を良く考えないといけません。

まとめ

ここまで、断水時の水の確保について解説してきました。

ポイントは、平素からの準備としては「できる限り備蓄」とし、災害時は水がとても貴重になるので、「節水」との両輪で対処するということです。

ただ、節水はそのとき急にできるものでもありません。本記事を参考にいざというときに困らないように平素から準備しておきましょう。

また、飲料水の備蓄についてはこちらをご覧ください。

知らなきゃ損!災害に備えた水の備蓄量はどれくらい?

ABOUT ME
もげら47
自衛隊で大型輸送ヘリの機長として15年勤務。その間、震災や林野火災など数多くの災害派遣に出動。その後消防防災航空隊に転職し、消防防災ヘリの機長として、10年以上にわたり山岳救助、空中消火活動などに従事。 次いで2年間地方自治体の防災課で防災関連の事務事業を推進するなど、防災一筋の人生。 現在はこうした経験を活かし、防災士ブロガーとして防災関連の情報を発信しています。 【保有資格】 ・防災士 ・事業用操縦士(回転翼機+飛行機) ・航空無線通信士 ・乙種第4類危険物取扱者 ・他
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