南海トラフ地震の発生が確実視されている中、高知県はその影響が最も大きい地域の一つとされています。
特に“激しい揺れ”と“津波”による被害が想定されており、いざというときに命を守るためには、事前の準備と行動計画が欠かせません。
この記事では来たるべき海トラフ地震から「どうやって命を守るか」という実践的な視点で、防災士の立場からお伝えします。
高知県はなぜ南海トラフ地震で危険なのか?
高知県は、南海トラフ沿いに位置し、過去の南海地震でも大きな被害を受けてきました。
政府の想定では、高知県の沿岸部で震度7の激しい揺れ、さらに土佐清水市と黒潮町では最大34mを超える津波が到達する可能性があるとされています。
→高知県 南海トラフ地震に備えるポータルサイト 最大クラスの南海トラフ地震の特徴
なので、まずはこの激しい揺れと津波という二つの被害を生き延びなくてはなりません。
そしてなによりも注意すべきは、津波到達時間が非常に短いこと。
土佐清水市、室戸市や東洋町など場所によっては、地震発生から3~4分で津波が押し寄せるとされており、揺れを感じた直後の避難行動が生死を分けます。
【高知県の海岸線への1メートルの高さの津波到達時間】

あなたの住む地域は大丈夫?──公式ハザードマップの読み解き方
まず最初にやってほしいことは、自宅や勤務先の予想最大震度と想定される津波の深さの確認です。
高知県では、詳細な「防災マップ」を公表しています。あなたの地域のリスクを確認してみてください。(画像クリックでリンク先を表示)

↑では「防災マップ」と「ハザードマップ」という2つの用語が使われていますが、ここではこれら用語の使い分けを余り気にする必要はありません。
が、どうしても気になる方はこちらをごらんください:
→「ハザードマップ」と「防災マップ」は何が違う?行政経験をもつ防災士が解説
震度分布
上のトップページで市町村をクリックすると詳細な地図が表示されます。
例えば震度分布は、次の画像ような表示となっています。(画像クリックでリンク先を表示)

津波到達時間
先程の震度分布画面の左側メニューで情報を切り替えることで、津波到達時間を表示させることができます。

すると、津波浸水予想時間図が表示されます。

津波到達までの時間が特に短い場所(0~5分)は赤色で示されています。
地震の揺れが収まるのとほぼ同時に津波が到達するくらいの場所もあるため、迅速な対応が生死を分けます。
高知家防災マップとは?
「高知県防災マップ」のトップページには「高知家の防災マップ」というボタンがあります。

なに?「こうちいえの防災マップ」って?
これは「こうちけ」って読むそうですよ。
要するに、自分の家から避難所までの経路を示してくれるなど自分専用の防災マップを生成できる機能なのです。
使わない手はありませんね。
名称が紛らわしいですが、「高知家の防災マップ」は「高知県防災マップ」の一つの機能と捉えるとご理解いただけると思います。下は、「高知家の防災マップ」のキャプチャー画面です(クリックでリンク先表示)。
地図上で、ご自分のお住いなどの場所をクリックすると、そこから最寄りの避難所までの経路を示してくれます。

左下の「印刷」ボタンを押すと、上で述べた情報がきれいにレイアウトされた状態で簡単に印刷ができます。

こうした避難経路や被害予想を記入した「防災マップ」は、いざという時にすぐに見られるよう、紙に印刷しておくと良いでしょう。
この画面で自宅周辺のリスクを把握し、さらに避難所までの経路を確認しておくことで、生き残るチャンスを大幅にupさせることができるのではないでしょうか。
なお、地図で表示させるだけではなく、実際に徒歩で移動してみることがとても重要です。特に、夜間や雨の日等様々な状況で歩いてみることで、避難のための備えに気づくことができるかも知れません。
揺れのあと、逃げるために──まずは“揺れ”を生き延びる3つの備え
さて、ここまではご自宅周辺の地震被害と津波からの避難経路の確認の仕方を紹介してきました。
津波が怖いのは間違いありませんが、まず何よりも最初にやってくる地震の揺れを生き延びなくてはなりません。建物が倒壊したり、家具の下敷きになってしまっては、逃げることすらできないからです。
ここでは、地震対策としてとても重要で基本的な3つの備えをご紹介します。
その①:家の耐震性を見直そう
- 築年数が古い木造住宅は、震度6以上で倒壊リスクが高まります。
- 自治体の「無料耐震診断」や補助制度もチェック。
詳しくはこちら:
→家の倒壊がいちばん怖い。地震への備えは“住まいの安全性”から始まる
その②:家具の固定はマスト
- タンスや冷蔵庫が倒れて通路をふさぐと、避難経路が閉ざされます。
- 転倒防止金具やストッパーは簡単に導入できます。
詳しくはこちら:
→やらないと絶対後悔!だけどやれば効果絶大-地震対策の定番「家具の転倒防止」
その③:寝室は“最優先”で安全に
地震は深夜に発生することもあります。そんな深夜、眠っている間は大変無防備です。だからまずは寝室防災で安全を確保しましょう。
詳しくはこちら:
→実は寝室がいちばん危ない!? 地震対策は“寝室防災”から始めよう
揺れたら即逃げる──津波避難で命を守る3つの原則
津波避難で最も重要なのは、とにかく早く動き出すことと、避難後に荷物や貴重品を取りに戻らないことです。特に海沿いの地域、低い土地の場合は要注意です。

原則①:地震を感じたら即避難
東日本大震災では、逃げ遅れもありましたが、荷物などを取りに行ったために津波に飲み込まれて犠牲になった人が大勢いました。
ここまで見てきた通り、高知県では地震発生からわずか数分で津波が到達する場所があり、「迷う」「家族が揃うまで待つ」「海を見に行く」といった行動が命取りになります。
このため、揺れ=「津波警報」と認識し、行政による避難指示を待つことなく自分で判断して高台や津波避難タワーへ走るよう、普段からイメージしておきましょう。

原則②:“津波てんでんこ”で逃げる
「津波てんでんこ」とは、三陸地方に伝わる言い伝えで、津波が来たら「親でも子でも構わず、各自がそれぞれに早く高台へ逃げろ」という意味です。まずは自分の命を守る行動をとることで、結果的に多くの命を救う「自助」の考え方に基づいており、東日本大震災の教訓にもなっています。
- 家族や同僚のことが気になっても、まずは自分が逃げる
- 家族で“てんでんこ”を前提としたルールを決めておく
原則③:平時に避難経路を歩いておく
- 徒歩避難が基本。車で逃げようとすると渋滞に巻き込まれるリスクが高い
- (先にも述べた通り)昼と夜、晴れと雨など環境が違う時に何度か歩いて確認を
また、津波避難については、東日本大震災での教訓が数多くあります。
「釜石の奇跡」など、子どもたちが助かった事例から学ぶことも大切です。
避難後に生き延びる──最低限の備えと心づもり
地震の揺れと津波から生き残った後のことも考えておかなくてはなりません。
食料や飲料水などの自宅備蓄
断水したり食料品の調達ができなくなることも想定すると、自宅には相応の備蓄をしておく必要があります。
- 水、非常食、非常用トイレ
- カセットコンロとガス缶
- 懐中電灯や乾電池、衛生用品など
あわせて読みたい:
→その備蓄で大丈夫?今すぐ始めるべき正しい災害備蓄の方法
家族での取り決め
仕事や学校に行っている間など外出中に発災すれば、家族が離れ離れで避難することは十分ありえます。実際、平成23年東日本大震災では平日の日中に発生しています。
インターネットが使用できる限りは、スマホや携帯電話を持っている人同士であれば連絡も取れますが、子どもはそうは行きません。非常時の集合場所と連絡手段をあらかじめ話し合っておきましょう。
また、ネットが使えない状況で遠隔地に住む親類・知人と連絡を取りたい場合などは災害伝言ダイヤルという方法があります。
あわせて読みたい:
→災害時の連絡手段、どう備える?本当に役立つ通信方法とは
高知県のリスクは確かに高い。でも、備えることで命は守れる
南海トラフ地震は確実に起こるとされています。
でも、事前に知り、考え、備えておけば、“命を守る”ことはできるのです。
防災の第一歩は、「知ること」そして「行動すること」。この記事がそのきっかけになれば幸いです。
高知県公式HPはこちら:南海トラフ地震に備えるポータルサイト
地震防災公式パンフレット:生き抜くために南海トラフ地震に備えちょき