高齢の親と離れて暮らす方、結構多いのではないでしょうか。
私の場合、まさにその状況です。
車で1時間ちょっとの距離に母が一人で住んでいますが、毎日顔を見に行けるわけではありません。
実は実家の防災がずっと気になっていました。
母自身も、
「対策しなきゃいけないことは分かってるんだけど、色々手間もかかるし」
ということで、対策が進んでいなかったというのが実態です。
先日、ようやく休みが取れて実家を訪れた際、家具の転倒防止など、完全ではないにせよできる範囲で整備してきました。
一人暮らし高齢者が災害時でも自宅で安心して暮らすには
阪神・淡路大震災における家屋内の被害による怪我の原因は、トップが家具等の転倒落下、次いで割れたガラスです。(日本建築学会「阪神淡路大震災 住宅内部被害調査報告書」より)

だからまずは、地震の揺れを生き残れるよう、そして怪我をしないよう、宅内環境を整備する必要があるのです。なぜなら災害時の負傷は、平時のそれに比べるとはるかに深刻だからです。
あわせて読みたい:
→災害時の怪我は想像以上に深刻──自分も周囲も守る「怪我をしない備え」が最も大切
地震対策は高齢者ひとりで出来ない

しかし宅内環境を整えるといっても、若く健康な人が行うのと異なり高齢者が一人で行うにはハードルが高いものです。
代表的な地震への備えとして真っ先に思いつくのが家具の固定。
しかし例えば「突っ張り棒」の設置にしても…
- 脚立に登って家具の上部と天井の隙間を計測する
- ホームセンターに行って適切な長さの突っ張り棒を選定し購入
- 家具の上のホコリを清掃
- 説明書を読みながら設置する
といった段取りと作業が必要です。これを高齢の親が一人で行うのは若い人が思うよりもずっと大変です。

だって、足腰が痛いから脚立に登るのも恐怖がある。万一転落でもしたら大怪我。
ホームセンターに行くには車を運転しなくてはならない。
細かい文字で書かれた説明書を読むのが億劫…。
普通にできていたことができなくなる。
それが年を取るということです。
子が手伝うべき地震対策のポイント
自分の家だから自分でやるべき──そう考えていると、手遅れになるかもしれません。
突っ張り棒、固定チェーン、L字金具を使った家具固定は、子である私たちが代わりにやってあげるべき対策です。
やるべきことはシンプルですが、命を守るためには非常に意味のあることです。

具体的な地震対策は、こちらの記事をご確認ください:
→やらないと絶対後悔!だけどやれば効果絶大-地震対策の定番「家具の転倒防止」
高齢者の防災は子どもが当事者に──「親孝行=防災」のススメ
“親を自助の当事者にする”時代は終わった
現在、日本では65歳以上の一人暮らし高齢者が約700万人にのぼるとされています(※2020年国勢調査)。
これだけ多くの高齢者が、自宅で一人きりで生活しているという現実があります。
そのうち、地震発生時にすぐ駆けつけられる家族がそばにいる人は、いったいどれだけいるでしょうか?
もはや「親にちゃんと備えさせる」ではなく、
“あなた自身が防災の当事者になる”ことが当たり前の時代です。
それは押しつけではなく、「命を守る選択肢を親に残してあげる」ことでもあります。
帰省時にやるべきチェックリスト5項目
帰省のタイミングで、以下のようなポイントを一緒に確認するだけでも大きな安心につながります:
- 家具の固定状況(突っ張り棒・L字金具の設置)
- 非常持ち出し袋の中身のチェック
- 夜間の動線(通路や懐中電灯)の安全性
- 災害時の安否確認方法(連絡手段・ルール)
- 水・食料・簡易トイレの備蓄状況
あわせて読みたい:
→実は寝室がいちばん危ない!? 地震対策は“寝室防災”から始めよう
三方よし:親・自分・社会のメリット
親は助かり、自分も親孝行ができてしかも安心、さらに将来的には行政や地域の支援の負担も減ります。
「親孝行=防災」は、親・自分・社会の三方にとって良い結果をもたらす、まさに“三方よし”、win-win-winの行動です。
まとめ|今日できる1アクション:実家の様子を思い出してみる
実家に対する無関心か、または「うちの親は大丈夫」という思い込みが、大切な親御さんの命を危険にさらすことになるかもしれません。
高齢の親に“自助”を求めるのではなく、あなた自身が“防災の主役”になること。
それが、今の時代に求められる新しい親孝行の形です。
ちょっと目を閉じて、実家の様子を思い出してみてください。
家具の固定、寝室の配置、高所に置かれた重量物、窓ガラス、非常持ち出し袋…etc.はどうなっていましたか?
そして次に実家に帰るとき、ひとつで構いません。
例えばタンスに突っ張り棒を取り付けてみてください。
転倒防止用マットを家具の下に入れてみてください。

それだけで、親の命が守れるかもしれません。
そしてそれは、あなた自身の安心にもつながっていくはずです。
※当サイト内の一部画像は、いらすとや様より使用の許可をいただいた上でAIで生成した“いらすとや風”のイラストを使用しています。