防災特集アーカイブ

高齢の親が一人暮らし…実家の防災は大丈夫?「高齢者の地震対策」として子ができること

どうも!もげら47です!
自衛隊で15年、防災航空隊で10年、自治体の防災課で2年、と防災一筋でやってきた防災士です。

高齢の親と離れて暮らす方、結構多いのではないでしょうか。
私の場合、まさにその状況です。
車で1時間ちょっとの距離に母が一人で住んでいますが、毎日顔を見に行けるわけではありません。
実は実家の防災がずっと気になっていました。

先日、ようやく休みが取れて実家を訪れた際、家具の転倒防止など、完全ではないにせよできる範囲で整備してきました。

作業の合間に母と防災の話をしていたところ、ある“思い込み”に気づかされました。

「地震が来たら、とりあえず避難所に行けばいいでしょ?そうすればなんとかなるじゃない」

当然のようにそう言う母。
私は驚きながらも、これが多くの人の抱く「地震と避難」の印象なのではないかと危機感を覚えました。

避難=避難所?高齢者に多い“避難所神話”を知る

「避難=避難所」と思い込んでいませんか?

「避難」とは、本来、「難」を「避ける」であって、命を守るための行動を指す言葉です。
避難所に行くことは、その“手段”の一つにすぎません。
つまり、避難所に行きさえすれば何とかなる、というわけではないのです

自宅が安全なら、自宅で過ごすのが最良です。これが「在宅避難」。

しかし、これまでの防災訓練の「成果」というべきか、「地震発生=避難所へ行進」と刷り込まれている人が大勢いるように見受けられます。

避難所に行くかどうかは、「より安全に過ごせるか」を基準に考えなくてはなりません。

あわせて読みたい:
▶️あなたの避難計画、本当に大丈夫?知らないと危険!防災のプロが教える避難の基本

これまでの地震に見る「避難所の実態」とは

熊本地震(2016年)、能登半島地震(2024年)に例を探すまでもなく、避難所は高齢者には厳しい環境となるため、精神的ストレスや肉体的負担によって体調を崩したり、それが原因で死亡する例が後を絶ちません。

くどいようですが、避難所に身を寄せるかどうかは、自宅で過ごせるかどうかで判断しましょう。自宅が倒壊したとか、駆体が歪んでしまって危険な場合などは避難所に身を寄せるのが正解ですが、高齢者にとっての避難所にはこうしたリスクがあることも知っておかなくてはなりません。

一人暮らし高齢者が災害時でも自宅で安心して暮らすには

阪神・淡路大震災では、家具の下敷きになって亡くなった高齢者の多くが、独居の方々でした。
地震で家が倒れずとも、家具の転倒によって命を落とすことがあるのです。

だからまずは、地震の揺れを生き残れるよう、そして怪我をしないよう、宅内環境を整備する必要があるのです。災害時の負傷は、平時のそれに比べるとはるかに深刻です。詳しくはこちらをご覧ください:
▶️災害時の怪我は想像以上に深刻──自分も周囲も守る「怪我をしない備え」が最も大切

更に、地震の揺れを生き残ったとしても家具や物品が散乱してしまうと、独居老人にとっては後片付けも大きな負担です。

つまり、「在宅避難」ができる家を整えておくことこそが大事なのです。

家が無事なら在宅避難でOK!でもその前提は「地震対策済みの室内」

地震対策を高齢者ひとりで出来ない理由

宅内環境を整えるといっても健康な若い人が行うのと異なり、高齢者が一人で行うにはハードルが高いものです。
代表的な地震への備えとして真っ先に思いつくのが家具の固定
例えば「突っ張り棒」の設置にしても…

  • 脚立に登って家具の上部と天井の隙間を計測する
  • ホームセンターに行って適切な長さの突っ張り棒を選定し購入
  • 家具の上のホコリを清掃
  • 説明書を読みながら設置する

といった段取りと作業が必要です。これを高齢の親が一人で行うのは若い人が思うよりもずっと大変です。

家具の突っ張り棒

だって、足腰が痛いから脚立に登るのも恐怖がある。万一転落でもしたら大怪我。
ホームセンターに行くには車を運転しなくてはならない。
説明書を読むのが億劫…。
普通にできていたことができなくなる。それが年を取るということです。

子が手伝うべき地震対策のポイント

親の家だから親がやるべき──そう考えていると、手遅れになるかもしれません。
突っ張り棒、固定チェーン、L字金具を使った家具固定は、子である私たちが代わりにやってあげるべき対策です。
やるべきことはシンプルですが、命を左右する可能性があるのです。

家具固定チェーン

具体的な地震対策は、こちらの記事をご確認ください:
▶️やらないと絶対後悔!だけどやれば効果絶大-地震対策の定番「家具の転倒防止」

高齢者の防災は子どもが当事者に──「親孝行=防災」のススメ

“親を自助の当事者にする”時代は終わった

現在、日本では65歳以上の一人暮らし高齢者が約700万人にのぼるとされています(※2020年国勢調査)。
これだけ多くの高齢者が、自宅で一人きりで生活しているという現実があります。

そのうち、地震発生時にすぐ駆けつけられる家族がそばにいる人は、いったいどれだけいるでしょうか

もはや「親にちゃんと備えさせる」ではなく、
“あなた自身が防災の当事者になる”ことが当たり前の時代です。
それは押しつけではなく、「命を守る選択肢を親に残してあげる」ことでもあります。

帰省時にやるべきチェックリスト5項目

帰省のタイミングで、以下のようなポイントを一緒に確認するだけでも大きな安心につながります:

  1. 家具の固定状況(突っ張り棒・L字金具の設置)
  2. 非常持ち出し袋の中身のチェック
  3. 夜間の動線(通路や懐中電灯)の安全性
  4. 災害時の安否確認方法(連絡手段・ルール)
  5. 水・食料・簡易トイレの備蓄状況

あわせて読みたい:
▶️もう迷わない!避難に最適な非常用持出袋はこう備えよう
▶️その備蓄で大丈夫?今すぐ始めるべき正しい災害備蓄の方法
▶️実は寝室がいちばん危ない!? 地震対策は“寝室防災”から始めよう

三方よし:親・自分・社会のメリット

親は助かり、自分も親孝行ができてしかも安心、さらに将来的には行政や地域の支援の負担も減ります。
親孝行防災」は、親・自分・社会の三方にとって良い結果をもたらす、まさに“三方よし”、win-win-winの行動です。

まとめ|今日できる1アクション:実家の様子を思い出してみる

実家に対する無関心か、または「うちの親は大丈夫」という思い込みが、大切な親御さんの命を危険にさらすことになるかもしれません。
高齢の親に“自助”を求めるのではなく、あなた自身が“防災の主役”になること。
それが、今の時代に求められる新しい親孝行の形です。

ちょっと目を閉じて、実家の様子を思い出してみてください。
家具の固定、寝室の配置、高所に置かれた重量物、9お窓ガラス、非常持ち出し袋…etc.はどうなっていましたか?

そして次に実家に帰るとき、ひとつで構いません。
例えばタンスに突っ張り棒を取り付けてみてください。
転倒防止用マットを家具の下に入れてみてください。

家具転倒防止用マットは完全ではないが一定の効果は期待できる。他の手段と組み合わせると良い。

それだけで、親の命が守れるかもしれません。
そしてそれは、あなた自身の安心にもつながっていくはずです。

ABOUT ME
もげら47
自衛隊で大型輸送ヘリの機長として15年勤務。震災や林野火災など多数の災害派遣に出動。|その後、消防防災航空隊に転職し、消防防災ヘリの機長として10年以上にわたり山岳救助や空中消火活動に従事。|次いで2年間、地方自治体の防災課で防災関連の事務事業を推進するなど、防災一筋の人生。|現在はこうした経験を活かし、防災士ブロガーとして防災関連の情報を発信しています。|【保有資格】防災士・事業用操縦士(回転翼機+飛行機)・航空無線通信士・乙種第4類危険物取扱者・他| 🐾 記事に登場する「わからんこ」や「ちびもげら」って誰? ▶️キャラクター紹介はこちら
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