どうも!もげら47です!
自衛隊で15年、防災航空隊で10年、自治体の防災課で2年、と防災一筋でやってきた防災士です。
災害で怪我をしたらどうしようかと思っていて
最近では応急手当の方法を検索したり、講習を受けたりする方も増えてきたし、勉強しておいた方がいいかもね
ちょっと待ってください。
怪我をすること前提で考えてませんか?
大災害の現場では、怪我をしても治療を受けられる保証はありませんよ!?
災害時の怪我を避けるべき3つの理由
「怪我をしたらどうするか」も大切ですが、それよりも何よりも、まずは怪我を避けることに徹底的にこだわってください。
まず、災害時の怪我は絶対に避けたい3つの理由について解説します。
1. 治療を受けられない可能性が高い
大災害が起きると、被災者が一斉に医療機関に殺到します。しかし、受け入れる側の病院もまた、被災していることが多いのです。
電気・水道などのインフラが破壊されて医療設備が使用不能になったり、建物自体が損傷して使用できなくなったりすることもあります。
その上医師や看護師も被災者となることがあるため、十分な人手が確保できないケースも珍しくありません。
「怪我をしても病院に行けばなんとかなる」という前提は、災害時には成立しないのです。
大災害の現場は、ある意味、戦場と同じです。
災害時に医療機関が機能停止した実例は多数存在し、その深刻さは想像以上です。
以下に代表的な事例を紹介します。
阪神・淡路大震災(1995年)
兵庫県では、4病院と101の診療所が全壊または焼失しました。建物被害を免れた医療機関も、ライフラインの寸断や医療機器破損などにより、医療機能は大きく低下しました。
▶️阪神・淡路大震災教訓情報資料集 被災地医療機関
東日本大震災(2011年)
石巻市立病院(宮城県)
津波により1階が完全に水没し、電気・上下水道などのライフラインが断たれました。患者・医療関係者約450名が孤立し、3日目にDMATが到着して救出活動が始まりました。
出典:https://www.m3.com/news/open/iryoishin/137843
気仙沼市立病院(宮城県)
高台に位置していたため建物被害はありませんでしたが、周囲の医療機関が機能停止する中、地域の中核病院として最大限の診療を継続しました。ライフラインの停止や患者の集中により、厳しい状況が続きました。
出典:気仙沼病院 東日本大震災活動記録集
熊本地震(2016年)
多くの病院では、医療設備の被害のため医療活動に大きな支障をきたしたり、最大震度7を記録した地域では、地割れや地盤の隆起沈降によって建物に甚大な被害が生じ、病院機能そのものに影響した病院もありました。
出典:熊本地震による医療施設の被害状況に関する調査研究報告書
これらの事例からも明らかなように、災害時には医療機関が機能停止する可能性が高いことから、まずは怪我をしないための備えが非常に重要です。自らの安全を確保することが、結果的に周囲の人々の命を守ることにもつながります。
2. 避難行動ができなくなる
怪我をすると、避難行動に深刻な支障が出ます。特に足を負傷した場合、自力で移動するのが難しくなり、迅速な避難ができません。場合によっては、建物の倒壊や火災などの二次災害に巻き込まれるリスクが高まります。
また、怪我人を介護しなければならない家族や近隣住民の動きも制限されます。結果として、周囲の人々の安全までも脅かすことになるのです。

自分が無事であることは、自分自身の命を守るだけでなく、他者を助ける余力を持つという意味でも非常に重要です。
3. 復旧・生活再建の足かせになる
災害から生き延びたとしても、生活はすぐには元に戻りません。家の片づけ、ライフラインの復旧、職場への復帰、地域の復興支援——やるべきことは山ほどあります。
しかし、怪我をしてしまっては、それらの活動に積極的に関われなくなってしまいます。特に一家の主、あるいは家族の中心となる人が怪我を負うと、家庭全体の再建スピードに大きく影響します。
「怪我人は他人の行動を制約する」—軍隊の常識から学ぶ
私が自衛隊に所属していたので、軍事行動について色々と勉強する機会がありました。
そんな中で一つ印象に残っている教えは、負傷者は部隊行動を鈍化させるということ。
戦場で負傷者が発生すると、他の兵力がその介護や後送に追われるため、部隊全体が影響を受けます。なお、この知識の本来の使い方は「敵は殺さず負傷に留める」という、こちら側の戦術です。

これを災害への対応に当てはめて考えてみます。
「防災」とは、言ってみれば人間と「災害」との戦い。
災害は私たちを負かそうとする「敵」です。
「敵」は我が方にけが人を多数発生させ、私たちの行動を鈍化しつつ、医療リソースも奪うことでさらに被害を拡大しようとしている、というわけです。
このように、災害現場も戦場と通じるものがある環境です。
救助や避難をするには、まず「自分が動ける状態であること」が最も重要なのです。

怪我を防ぐために今できる備え
では、どうすれば怪我を防ぐことができるのでしょうか?ポイントは「事前の備え」と「環境の工夫」にあります。
- 寝室の安全確保:地震が夜間に起こる可能性を想定し、寝室に倒れやすい家具を置かない、枕元に靴を置くなどの対策を。
▶️実は危険がいっぱい!?地震対策はまず寝室から - 家具の固定と配置:転倒防止器具の活用、避難経路を塞がない家具配置。
▶️「もっと備えておけば…」と後悔しないために!防災のプロが厳選する本当に必要な地震対策 - 履き物の見直し:スリッパではなく、つま先を守れる室内シューズを常備。
- 高齢者・子ども・障がいのある方への配慮:移動補助具、段差解消マット、手すりなどを備える。
まとめ:応急手当よりも、”怪我をしない“備えを
災害時の怪我は、単なる「痛み」では済みません。
- 治療を受けにくい
- 避難に支障が出る
- 家族や周囲の人を巻き込む
- 復興の妨げになる
だからこそ、「怪我をしないための備え」に徹底的にこだわってほしいのです。
あなたが動けることが、あなた自身の命を守り、そして周囲の人の命をも守ることにつながります。