「避難」って言うけどさ、どういうときに避難しなきゃいけないの?
自宅にいたらなんでだめなの?
避難とは「難」を「避ける」ことです。つまり命を守る行動全部を意味するのです。「自宅にいたらダメ」とか「避難所に行かないといけない」ってわけじゃありません。
ここでは「避難行動」について解説します。
これを読めば、「避難」とはどうすることなのか、そして避難時に気を付けることなどがわかりますよ。
それではどうぞ。
避難とは
避難について基本的なこと!
避難=避難所へ行く、ではありません!本来の意味は「難」を「避ける」こと。だから、避難所に行く以外の選択肢もあります。固定的に考えず柔軟に対応しましょう。
例えば、自宅にいても大丈夫であればそのまま自宅にとどまります。
そうでなければ公的な避難所か、親類、知人宅という選択肢もあります。
ただし、親類や知人宅を選択肢に入れる場合は、平時の内に予め話し合っておくことが重要です。
避難の種類
一口に「避難」といっても三種類あるので、状況に応じて柔軟に選択しましょう。
- 在宅避難=自宅で過ごす
- 立ち退き避難=自宅を出る避難
- 垂直避難=洪水を避けるため自宅の2階や集合住宅の上階に避難すること
一番いいのは「在宅避難」
洪水、土砂災害、液状化により被害を受けるかどうかは土地選びで、地震による建物被害は家の建て方でそれぞれ決まります。
ここで何らかの危険が予想される場合は、「立ち退き避難」をしなくてはなりませんが、自宅が安全であれば「在宅避難」ができます。
これから家を建てる方は、立ち退き避難をしなくて済むよう、ぜひ土地選びを慎重にしていただきたいと思います。
その土地選び、ちょっと待った!そこは本当に安全?防災のプロが教える家を建てる場所の選び方
持ち家の方は、以下のポイントで安全性をチェックしてみましょう。」
- ハザードマップで災害リスクを確認
重ねるハザードマップ - 家の耐震性をチェック(築年数、耐震基準)
「もっと備えておけば…」と後悔しないために!防災のプロが厳選する本当に必要な地震対策 - 避難経路の確保(出口、隣家との距離)
立ち退き避難が必要な状況
火災
火災の場合、避難行動の遅れは即、生死に直結します。素早く判断し行動しましょう。
- 火災発生!→初期消火
- 消火活動は逃げ道を確保してから(出口を背にして消火活動)
- 炎が天井に届いた!→もう手に負えません。すぐに脱出!
地震
地震で大きく揺れ、駆体に明らかな歪みが生じたなど異常があれば本来の耐震性能が損なわれているためそこに留まることは危険です。
実際、熊本地震では1回目の揺れでは持ちこたえたのに、2回目以降の地震で倒壊した住宅が多かったと報告されています。大きな地震の後は家屋に亀裂が歪みが無いか内外をよく観察し、異常があれば避難しましょう。
津波
津波の発生が予想される場合は、一も二もなく高台に避難しなくてはなりません。
土砂災害
大雨で地盤が緩んでくると土砂災害発生の危険度が高まります。
お住まいの地域が土砂災害警戒区域(イエローゾーン)や土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)に含まれている場合は、大雨の季節は気象情報を積極的に取得するなどして警戒しましょう。これらイエローゾーンやレッドゾーンは、ハザードマップで調べることができます。平時の内に確認しておきましょう。
ハザードマップは市町村が住民に配布するほか、役場に行けば手に入ります。
または次のサイトで全国のハザードマップを見ることができるので利用してみてください。
土砂災害発生の危険が高まると、気象庁の発表する防災気象情報に基づき市町村長は当該地域の住民に対し「避難指示」を発表します。お住まいの地域に避難指示が発令されたら、すぐに避難を開始しましょう。
もちろん、避難指示が出る前に自主的に避難をしてもかまいません。
また、地震によって土砂災害が発生することもあります。がけや斜面の近くにいるときに地震が発生した場合は、できるだけその場から離れましょう。
洪水
洪水しやすい場所は決まっています。当たり前ですが低いところです。
洪水の危険度はハザードマップで確認可能です。こちらも先ほど紹介したサイトで確認できます。
大雨によって洪水の危険が高まると、気象庁(地方気象台)は地域を指定して注意報や警報を発表します。また、洪水の危険度が高まると市町村から避難指示が発令されるので、遅滞なくこれに従いましょう。普通は避難先が示されます。ただ、自分の命を守るのは自分ですから、避難指示が発令されなくとも、早め早めに、自主的に避難することも重要です。
.jpg)
なお、すでに洪水が始まっている場合(警戒レベル5;後述)に避難するのは却って危険です。流水の中では足を取られて流されるし、濁った水では道路と水路の区別がつきません。暗くなればなおさら危険です。自宅の2階に避難することもあります(垂直避難)。
ポイントは、明るい内に、冠水する前に避難です。
子ども、お年寄り、体の不自由な人がいる家庭では特に早めの避難に心がけましょう。
「警戒レベル」に応じた「避難情報」
災害発生の危険度に応じ「警戒レベル」が設定されています。この警戒レベルによって、お住まいの市町村から地域を指定して「避難指示」が発令されるので、それに従って避難します。
表は分かりにくいかも知れませんが、要するにポイントはこういうことです:
- レベル5 → すでに災害発生、命を守る行動を
- レベル4 → すべての人が避難
- レベル3 → 高齢者など避難開始

気をつけていただきたいのは、自宅に高齢者、乳幼児、障がい者などがいる場合は避難に時間がかかるため、その分避難開始を早くしなくてはならないということです。
また、令和3年の災害対策基本法改正で「避難勧告」という区分は廃止されました。「高齢者等避難」の次は「警戒レベル4」の「避難指示」です。

避難指示が発令されたら全員避難しなくてはなりません。ただし、繰り返しになりますが避難は「避難所に移動する」ことと同じ意味ではないので、自らと大切な人を守るために必要と思われる最善の行動を取ってください。
避難の手順と気をつけること
基本的な手順は次のとおりです:
- 安全な服装
- 火事の原因をなくす
- 非常持出袋を持つ
- 基本は徒歩
- 安全な経路を選ぶ
- 明るい内に避難
いずれも「自分の身は自分で守ること」に繋がります。よく把握しておいていただきたいのは、災害時は救助機関も医療機関も多忙を極めるため、怪我をしたり行方不明になっても、すぐに助けてもらえるとは限らないということです。
安全な服装で
避難時の服装は次の点に気をつけましょう:
- 長袖・長ズボン(ケガ防止)
- 秋~春は重ね着(体温調節しやすい)
- 両手を空けるため、傘よりレインコート
- 洪水時は運動靴(長靴はNG:水が入ると歩けなくなり、しかも足を取られて危険)
- サンダル・ハイヒールは絶対NG!(怪我の元)
火災のリスクを減らしてから
特に地震発生後は停電することがありますが、自宅を後にする前は必ずブレーカーを切っておきましょう。給電が再開されたときに「通電火災」が発生することがあります。阪神・淡路大震災ではこの「通電火災」で多数の家屋が火災で消失しました。
非常持出袋をもって
非常持出セットを普段から準備しておきましょう。このセットは玄関付近に置いておき、いざというときすぐに持ち出せるようにしておくことが重要です。
基本は徒歩で
自動車で避難すると、大渋滞に巻き込まれて移動できなくなる場合があるため、避難は徒歩が基本です。何よりも渋滞を引き起こせば緊急車両の通行の妨げになります。
多くの場合は公民館や最寄りの小学校が避難先に指定されるので、平時からハザードマップで避難所を確認し、実際に歩いて確かめておくことが重要です。
安全な経路で
ここでいう「安全な経路」は、避難の必要に迫られたときに慌てて考えるのではなく、普段から「こうなったらこうする」と想定しておくことが重要です。
地震後や大雨の時は土砂崩れで道路が通行できなくなっていたり、橋が崩落しているかも知れません。また、水害のときは河川や水路の近く、低い土地は特に危険なので近づかないようにしましょう。
冠水している場合は、水深が浅くても流れがあれば足を取られて深いところまで流されてしまいます。
明るい内に
特に水害時は夜間に避難することは大変危険です。足元が見えず、知らない内に深みに足を取られて流される危険があるし、しかもその後発見してもらえる確率は昼間よりも圧倒的に下がります。
そもそも水害発生時は、消防署も消防団も水防団もみんな大忙しであることをよく認識しておきましょう。
もし避難のタイミングを逃したら、上階へ逃げる「垂直避難」か、高台へ避難するなど、とにかく命を守るために最善と思われる行動を取りましょう。
指定避難所と指定緊急避難場所
ところで「指定避難所」と「指定緊急避難場所」、違いはご存知でしょうか。単に「避難所」と「避難場所」とも言われますが、その違いは簡単に言うと次の通りです:
●指定避難所=長期間避難生活をする場所(例:体育館、公民館など)
●指定緊急避難場所=とにかく身の安全確保(例:公園、校庭など)
という訳で、それぞれ用途が異なります。いずれも自治体が策定する「地域防災計画」で指定されています。
避難所については、次の記事を御覧ください。
まとめ
避難とは「難」を「避ける」ことであり、必ずしも避難所に行くことではありません。
まずは自宅で安全に過ごせるか確認し、難を避ける最適な方法を選びましょう。
避難が必要な状況では、警戒レベルや避難情報を活用し、早めの行動が重要です。避難時は適切な服装・持ち物を準備し、安全なルートを確保することが命を守るカギとなります。