基本知識

災害時に役立つ「防災標識」って知ってる?―見慣れたマークの意味と覚え方を徹底解説

そういえば町なかでこういう↑ピクトグラムの描かれた標識を見かけるんだけど、どうやって使うものなの?

いわゆる「防災標識」ですね。
これらは「災害種別避難誘導標識システム」といって、災害の種類ごとに避難場所を示すための標識です。

確かによく町中で見かけるのですが…

  • 見たことはあるけど意味がわからない
  • そもそも名称すら知らない
  • 普段は風景に溶け込んで気づかない

というのが現状ですね。
この記事では「防災標識災害種別避難誘導標識システム)」について解説し、旅行先や見知らぬ土地でも命を守るために役立てる方法を紹介します。

防災標識とは何か

改めて紹介すると、防災標識とは災害時に安全な避難場所や避難経路を示す統一ルールのあるサインのことです。

正式には「災害種別避難誘導標識システム」と呼ばれ、内閣府や国土交通省などが整備を進めているものです。

目的は、災害が発生した際に誰もが迷わず避難できるようにすること。
地元住民はもちろん、旅行者や外国人など土地勘のない人にとっても分かりやすいように作られています。

なぜ「システム」というかと言うと、役割の異なる標識をこんなふう↓に組み合わせて使うからです:

災害種別避難誘導標識システムの流れ

ここに使用されるピクトグラムは、全国で使用されることを想定し、日本工業規格で統一されたものになっています。

種類と意味を知ろう

図記号(ピクトグラム)

避難場所の図記号

標識の前に、まず標識に使用される「図記号(ピクトグラム)」について説明します。

まずは避難場所。

避難場所の図記号3種類

これらの図記号は「避難場所」を表すために使用されるのですが、高潮及び津波のための避難場所と、それ以外の避難場所によって使い分けられます。

なお、しばしば「避難場所」といわれますが、正確には「指定緊急避難場所」といいます。

これは災害の危険から命を守るために緊急的に避難をする場所であり、市町村長が、洪水、崖崩れ・土石流・地滑り、地震、津波、大規模な火事等の災害種別ごとに指定します。

あれ?ちょっと待って
避難所と避難場所って違うの!?

いい質問ですね、実は両者は違います。
指定緊急避難場所は災害から命を守るため緊急的に避難するところで、公園や校庭などが指定されます。
一方指定避難所は自宅に戻れない人が一時的に滞在するところで、体育館、公民館などが指定されます。
用語がよく似ているので紛らわしいですよね。

因みにこれ↓が「指定避難所」の図記号。建物の中に駆け込んでいる様子で表現されます。

指定避難所の図記号

どこか他でも見たことがあるような…

これ↓でしょう?非常口を表す誘導標識ですね。
確かにすごくにていますが、こちらは人物が屋外に向かって脱出しているところです。

災害種別の図記号

津波や土砂災害など、それぞれの災害を表すもので、次の5種類があります。

あれ?地震がないよ?

良いところに気づきましたね。
「地震」そのものは避難の理由になりません。
むしろ、避難の理由としては地震によって発生する津波、大規模な火災地滑り・崖崩れなどです。つまり上の5種類でまとめられるということ。

津波、崖崩れ、洪水…どれも発生する前に避難しなくてはならないものですが、地震に先立って避難するというのは現実的ではありません。

こうしたこともあって内閣府は災害種別図記号に「地震」に関する図記号は設けていないのです。

注意の図記号

災害が発生する恐れのあることを示すために使われるもので、次の3種類があります。

例えば、このように↓使用されます。これは津波の危険がある地域に設置される津波注意標識の例です。

津波注意標識の例 津波の危険のある場所に設置される

標識

避難誘導標識

避難場所への方向を、矢印と距離で示すための標識で、ここまで説明してきた「避難場所の図記号」と「災害種別の図記号」などを組み合わせて、災害ごとに避難すべき場所を指し示すために使用されます。

要するに避難場所への「道しるべ」です。

避難誘導標識の例

途中で途切れることなく、必要十分な数を設置することが求められています。
が、全国すべての市町村で設置されているわけではないので注意が必要です。

避難場所標識

避難場所標識の例

全国ほぼすべての小中学校の正門付近に設置されているので見たことのある人も多いのではないでしょうか。

災害種別ごとの図記号の下に「○」「✕」が描かれていて、それぞれの災害に対応しているかどうかが人目でわかるようになっています。

そして↓こちらは津波避難場所を示すための標識。

津波避難場所標識の例

なぜ気づかれにくいのか

これまで紹介してきた「防災標識」。実際には多くの町のいたる所に設置されているにもかかわらず、認知度は高くありません。その理由としては…

  • 普段は緊急性がなく、気に留めない
  • 風景に溶け込み、広告や看板の陰に隠れがち
  • 学校や自治体で十分に説明される機会が少ない

といった点が挙げられます。
つまり「探そうと意識しない限り、見えてこない存在」なのです。

が、直接命を守るための標識なので、覚えておいて損はありません。

覚えておきたい活用シーン

自宅周辺

いや、自分が住んでる町の地形は把握してるから、津波が来たときの避難先とかは分かってるし、別に覚えておかなくても良いかな。

確かに自分の住む町ではそういうことも言えますが、町にはそうでない人もたくさんいます。

それだけではなく、ひと目でわかるように工夫されたピクトグラム、よみがな、外国語表記によって、子どもや外国人にも理解できるようになっているのです。

旅行や出張先

そしてあなたにとってこれら標識がその真価を発揮するのは、見知らぬ土地にいるとき

災害はいつどこで発生するかわかりません。
旅行先や出張中に地震や津波が起きたとき、迷わず避難行動を取るために、防災標識が「ここへ逃げればよい」という命綱になります

だから、あなたの住む街にある防災標識はその街のことをよく知らない人達のためとご理解いただけるのではないでしょうか。

日常でできる「探す習慣」

防災標識を活用するコツは、特別な知識より「意識して探す習慣」を持つことです。

  • 散歩や買い物のときに「避難所マーク」を探す
  • 旅行で駅を出たら周囲の標識を確認する
  • 子どもと一緒に「避難所探しゲーム」をしてみる

こうした習慣が身につけば、いざというときに素早く動けるようになります。

まとめ

防災標識は、普段は気づかれにくい存在ですが、災害時にはあなたや家族の命を守る道しるべとなります。

自分の町だけでなく、旅行先や出張先でも必ず役に立ちます。
今日からぜひ、防災標識を探す習慣を始めてみてはいかがでしょうか。

ABOUT ME
もげら47
自衛隊で大型輸送ヘリの機長として15年勤務。震災や林野火災など多数の災害派遣に出動。|その後、消防防災航空隊に転職し、消防防災ヘリの機長として10年以上にわたり山岳救助や空中消火活動に従事。|次いで2年間、地方自治体の防災課で防災関連の事務事業を推進するなど、防災一筋の人生。|現在はこうした経験を活かし、防災士ブロガーとして防災関連の情報を発信しています。|【保有資格】防災士・事業用操縦士(回転翼機+飛行機)・航空無線通信士・乙種第4類危険物取扱者・他| ■記事に登場する「わからんこ」や「ちびもげら」って誰? ■キャラクター紹介はこちら
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