防災の基本

災害大国日本。ここに住むならどんな災害があるのか知らなきゃ話になりません!!

災害に備えようっていうけど、じゃあ具体的にどんな災害に備えればいいの?

そうだね
「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」
じゃ、まずは日本で発生しやすい災害について調べてみようか

日本で発生しやすい災害、と言いましたが、皆さまご存知の通り、日本は災害大国です。

災害の百貨店と言っても良いくらいです。ここではどんな災害が発生しやすいか、そしてどのようにして災害が発生するのか今一度見てみましょう。

地震

まずは皆さまおなじみの「地震」ですね。

世界陸地面積の中で、わが国の国土面積はたったの0.29%に過ぎませんが(総務省統計局2022年統計)、世界で発生するM6.0以上の地震の内、日本で発生する割合は18.5%もあると言われています(H26年度防災白書より)。

また、世界のM6以上の震源分布(下図)を見ると、他の地域に比べて日本列島付近はなかなかの密度で地震が集中していることが分かります。

大陸プレートの境界で多く発生しているのですね。

地震はプレート境界で発生する「海溝型」だけではなく、「活断層」で発生する「内陸型」もあります。こういう内陸部で発生する地震を「直下型」とも言います。

活断層って何?

「活断層」は「断層」の一種。これはいわば大地の傷、割れ目みたいなものです。

この割れ目は普段はしっかりかみ合っていますが、大陸を載せたプレートは絶えずゆっくりと動いているので、この運動によって地盤に力が加わると、その割れ目がずれます。このときずれた衝撃で地震が発生します。これら地震発生をもたらした断層のうち、繰り返し活動し、将来も活動すると考えられる断層のことを「活断層」というのです。

一つの活断層における地震発生間隔は1000年~数万年と長いことが特徴ですが、国内には数多くの活断層が走っているので、全国的に見れば頻度は多くなります。

例えば最近発生した代表的な内陸型(直下型)地震の例は次の通りです:

  • 2004年 新潟県中越地震
  • 2016年 熊本地震
  • 2018年 大阪府北部地震
  • 2019年 北海道胆振東部地震
  • 2024年 能登半島地震

これに対し、海溝型地震の発生間隔は、例えば南海トラフ地震であれば100~150年です。

地震調査研究推進本部の長期評価によると、2025年1月時点で、M8から9クラスの地震が今後30年以内に発生する確率は80%程度とされており、いつ発生してもおかしくない状況です。

大きな地震の場合は家具の転倒や家屋の倒壊など直接命に関わる被害が発生しやすいことにも注意が必要だね

津波

地震と来たら、次は津波です。

日本は全周囲海に囲まれているし、海溝型地震が発生すれば津波が発生する可能性が極めて高いです。それに海岸線が複雑な形をしているから、津波による被害が大きくなりやすいという特徴もあります。

また、津波は浅い海岸付近に来ると波の高さが急激に高くなることがあり、そのため沿岸での高さ以上の標高まで駆け上がります。その後は引き波が倒壊した家屋などの漂流物を一気に海中に引き込みます。

その恐ろしさは、2011年の東日本大震災で十分理解しているところだと思います。

津波から身を守るには、迅速に高台に避難する以外にありません。

南海トラフ地震は大きな津波を伴うことが予想されているので、太平洋側の沿岸部にお住まいの方は、普段から地震発生時の対処を考えておいた方が良いですね。

火山噴火

日本は世界の中で見ても火山がとても多いのが特徴です。

噴煙を上げる御嶽山 2014年

日本には活火山(過去1万年以内に噴火した履歴のある火山)が111あって、それは全世界の活火山の7%に相当します。先に述べた通り、国土面積は全世界の0.29%に過ぎないのにこれだけの活火山が集中しているとは、中々の密度ではないでしょうか。

下図は、世界中の火山分布です。(気象庁資料より)

そんな事もあって、18世紀以降、我が国で10人以上の死者・行方不明者が出た火山活動はこんなにあります(気象庁HPより引用)。

年月日火山名犠牲者数備   考
1721/06/22浅間山15噴石による
1741/08/29渡島大島1,467岩屑なだれ・津波による
1764/07/01恵山多数噴気による
1779/11/08桜島150余噴石・溶岩流などによる「安永大噴火」
1781/04/11桜島8+不明7高免沖の島で噴火、津波による
1783/08/05浅間山1,151火砕流、土石なだれ、吾妻川・利根川の洪水による
1785/04/18青ヶ島130~140当時327人の居住者のうち130~140名が死亡と推定され、残りは八丈島に避難
1792/05/21雲仙岳約15,000地震及び岩屑なだれによる「島原大変肥後迷惑」
1822/03/23有珠山103火砕流による
1841/05/23口永良部島多数噴火による、村落焼亡
1856/09/25北海道駒ヶ岳19~27噴石、火砕流による
1888/07/15磐梯山461(477とも)岩屑なだれにより村落埋没
1900/07/17安達太良山72火口の硫黄採掘所全壊
1902年8月上旬伊豆鳥島125全島民死亡。
1914/01/12桜島58~59噴火・地震による「大正大噴火」
1926/05/24十勝岳144(不明含)融雪型火山泥流による「大正泥流」
1940/07/12三宅島11火山弾・溶岩流などによる
1952/09/24ベヨネース列岩31海底噴火(明神礁)、観測船第5海洋丸遭難により全員殉職
1958/06/24阿蘇山12噴石による
1991/06/03雲仙岳43(不明含)火砕流による「平成3年(1991年)雲仙岳噴火」
2014/09/27御嶽山63(不明含)噴石等による

ここには出てきませんが、実はおなじみの富士山も活火山と分類されていて、上の表よりもさらに昔には何度も噴火していました。

今日、もし富士山が噴火すれば、登山者への直接的な影響はもちろんですが、風下にあたる関東地方への降灰により、道路交通網の混乱や停電など、インフラへの影響が懸念されます。

洪水

日本は洪水被害が多くなる要因がいくつか揃っています。

  • 降水量が多く、世界平均の約2倍に相当
  • 梅雨や台風などにより度々大雨に見舞われる
  • 列島を縦断する山脈があり急峻な地形のため河川の多くが急勾配で、かつ流域面積が小さい
  • 都市化が進み、地面がアスファルトやコンクリートに覆われているため排水能力が低下し、かつ熱がこもりやすいため集中豪雨の原因になる

洪水の危険度は、市町村が発表するハザードマップで調べることができます。下図は、大阪市淀川が氾濫した場合を想定した浸水深を表したハザードマップです。市町村はこうしたハザードマップを作成し、浸水想定区域を住民に周知するよう法律で義務付けられています。

一度お住いの地域のハザードマップを調べてみてはいかがでしょうか。

言うまでもないことですが、水は低いところに流れます。だからハザードマップでは低いところがピンク色に着色されていて、その濃さで洪水のときの浸水深が表されています。

じゃあ高いところに住めば良いんじゃないの?

全くその通り。
でも今住んでいるところからいきなり引っ越せと言われてもそんな簡単にいかないよね。特に持ち家の場合は。
だから平和なうちにハザードマップを確認しておいて、洪水になったらどうするかを予め考えて準備しておくことが重要だね。

また、洪水で床上浸水や床下浸水によって家屋が甚大な被害を受けることがあります。居住できなくなるというだけではなく、一度でも家屋が浸水を経験した後、十分に乾燥できなくなった場合、シロアリ発生の原因になったり、家屋の構造部材が腐食することによって地震への耐性が低下する場合があるので、注意が必要です。

土砂災害

土砂災害を発生させる要因は2つあります。一つは豪雨、もう一つは地震です。

土砂災害は地震と違って発生しやすいところがある程度予測がついています。

どの市町村でも「土砂災害ハザードマップ」を公開しているので、その危険度を簡単に見ることができるのです。こちらも、市町村は法律で住民に対し危険区域を示すよう義務付けられているので、「市町村名」と「土砂災害」で検索すれば簡単に閲覧できます。

ハザードマップの例

黄色で着色されているところは「土砂災害警戒区域」(イエローゾーン)と呼ばれ、崩壊した土石等によって被害を受けるおそれのある区域です。

一方、赤色で着色されているところは「土砂災害特別警戒区域」(レッドゾーン)といって、建築物が損壊し住民に大きな被害を及ぼす恐れのあるところを表しています。ここでは居室のある建築物を建設することが規制されます。

大雨が続いたとき、市町村長は土砂災害による被害を局限するため住民に避難指示を発出することがありますが、それはこういう危険な場所に居住している住民を対象に発出されるのです。

そういう意味では、ある程度予測がつくので対処がしやすいという特徴がありますが、問題はそうした避難指示を真剣に受け止めてちゃんと避難するかどうかにあります。

こうしたハザードマップは、適切な避難経路の選定のためいつでも確認できるようにしておきましょう。ただし、災害が発生したときでもネットが使用できるとは限らないため、紙で準備しておくと良いでしょう。多くの場合市町村役場で配布しています。

もっと良いのは、住む場所を選択するときはこうした危険な地区を避けることです。

住む場所の選び方については、こちらの記事で紹介しているので、良かったらご覧ください:

その土地選び、ちょっと待った!そこは本当に安全?防災のプロが教える家を建てる場所の選び方

台風

これまで述べてきた災害の中では、最も予測がしやすい部類と言えるでしょう。しかしながら被害の範囲が広域に及ぶ上、風と雨のダブルパンチでやってくるため勢力の強い台風の直撃を受ければ、ただではすみません。

ところで台風はどこからやってくるのでしょう。そしてなぜ夏から秋にかけてやってくるのでしょうか。

台風は日本の南海上、赤道付近で誕生します。そこでは強い日射により、上昇気流が発生します。水蒸気をたっぷり含んだ強力な上昇気流が発生するのですが、このとき地球の自転の影響(コリオリの力)によって渦を巻くのです。上昇気流に含まれた水蒸気は上空で冷やされ巨大な雲を形成します。こうして台風が出来上がります。

出来上がった台風は「太平洋高気圧」の縁辺部に沿って北上してきます。その後大陸からの偏西風に流され、あたかも日本列島を舐めるかのように移動していくのです。

太平洋高気圧の「張り出し」によって、台風の経路は影響を受けます。

太平洋高気圧の張り出しが弱まる秋にかけて、徐々に東寄りの経路を取るようになります。

日本列島はちょうど台風の通り道になっているのです。日本めがけてはるか南からやってきては被害を撒き散らしていくという台風。迷惑ですが、この列島に住んでいる限りそれをマネージしていくほかありません。

まとめ

わが国で発生しやすい自然災害は、次の4つです:

  • 地震
  • 津波
  • 火山噴火
  • 洪水
  • 土砂災害
  • 台風

改めて見てみると、私達が準備しなくてはならないリスクってこんなにあるんですね。

これらリスクに対し、どのような準備をしていくかはこちらの記事を御覧ください

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ABOUT ME
もげら47
自衛隊で大型輸送ヘリの機長として15年勤務。その間、震災や林野火災など数多くの災害派遣に出動。その後消防防災航空隊に転職し、消防防災ヘリの機長として、10年以上にわたり山岳救助、空中消火活動などに従事。 次いで2年間地方自治体の防災課で防災関連の事務事業を推進するなど、防災一筋の人生。 現在はこうした経験を活かし、防災士ブロガーとして防災関連の情報を発信しています。 【保有資格】 ・防災士 ・事業用操縦士(回転翼機+飛行機) ・航空無線通信士 ・乙種第4類危険物取扱者 ・他
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