どうも!Mogera47です!
自衛隊で15年、防災航空隊で10年、自治体の防災課で2年、と災害対策一筋でやってきた防災士です。
わが国は災害大国。毎年どこかで地震や水害、土砂災害が発生しています。
そういう報道に接するたびに、買い出しに行ってはいませんか?
災害が発生すると、多くの人々が食料品や水、トイレットペーパーなどを一斉に買い出しに出かけます。人によってはできるだけたくさん買い貯めしておかなくてはと「買い占め」をするケースもあります。なぜこういうことになるのでしょう。

この記事では、買い占め発生の仕組みから、その競争に巻き込まれないようにするためのポイントをまとめてみました。
結論から言えば、防災とは普段からきちんと災害に備えておくこと。集団パニックに巻き込まれないようにするにはこれに尽きます。備えておけば冷静に対処できますし、物資不足で困ることもありません。
何だ分かりきったこと。
その「分かりきったこと」でも中々できないよね
それが証拠に災害の都度、多くの人々が買い貯めに走ってるもん
買い占め発生の仕組み
どうして人は災害時に買い占めに走るのでしょう。
それは自分も何か買わないと困るのではないか、という心理が生まれるからです。
商品が品薄になれば、テレビやネットニュースなどでそれが報じられます。それを見た人々は、「他の人が買っているなら自分も買わなければ」という心理が働きます。

これを「社会的証明バイアス」といい、自分の考えより多数派の意見を正しいと判断してしまう「認知バイアス」の一種です。報道もそこは当然配慮していて、視聴者には冷静になるよう呼びかけるのですが、一度火のついた群衆は中々簡単に冷静になれません。こうして買い占めは加速します。
道路などのインフラに発生した被害のため物流が滞ることで供給不足になることもありますが、発災初期の品薄は、ほぼこうした心理による買い占め行動が原因です。
これらの行動は、自分たちの安心を守るためという意図で行われることが多いのですが、社会全体に悪影響を及ぼします。
食事くらい何食か抜いただけでは死なないし、買い出しに行かなきゃいいじゃん。
ぼくは冷静でいられる自信がある。
本当にそうかな。
「自分は冷静でいよう」と思っていても、もし自分の備蓄が十分でなければ、自衛のために結局買い出しの行列に並ぶことになっちゃう。
つまり、自分の意志とは無関係にそうした競争に巻き込まれることもあるよ。
空っぽの商品棚をテレビやXなどのSNSで見ることがあると思いますが、こうした映像は、災害時の混乱や不安感を煽る典型的なシーンの一つです。

こんなふうにして、これまでの非常時には次のような買い占めが発生してきました。
発災後の買い占め事例
東日本大震災(2011年)
発災当日には震度4程度で大きな被害は出ていなかった首都圏でもコンビニやスーパーでは生活必需品が一斉に商品棚から消えました。更にテレビニュースで「空っぽの商品棚」の映像が繰り返し放送され、人々の不安が加速しました。
熊本地震(2016年)
Twitter上でも「どこにも水が売っていない」という投稿が多数拡散され、店舗での買い占め行動が激化しました。実際には物流が再開する目処がついていたにもかかわらず、過剰な買い溜めが続きました。
COVID19(新型コロナウイルス)流行初期(2020年)
マスクやトイレットペーパーの不足を煽る映像がSNSで拡散。全国的な買い占め騒動が起こり、一時的な在庫不足に拍車をかけ、店舗側が購入制限を設ける事態になりました。マスクの転売も横行し価格が高騰しました。

買い占めに巻き込まれないようにするには?
では買い占めに巻き込まれないようにするにはどうしたら良いのでしょうか?
普段から災害に準備しておく
分かりきった話ですが、これが防災の本質ですし、唯一にして最強の特効薬です。
わが国は災害大国です。こちらの記事でも解説しております:
災害大国日本。ここに住むならどんな災害があるのか知らなきゃ話になりません!!
これを前提に普段から準備を進めておくのです。面倒かもしれませんが、普段から備蓄を含めて様々な準備をしておけば、非常時の備えをしておかないともっと面倒なことになります。
その備蓄で大丈夫?今すぐ始めるべき正しい災害備蓄の方法
知らなきゃ損!災害に備えた水の備蓄量はどれくらい?
例えば、トイレットペーパー、ラップ、生理用品、おむつなどは大地震がおきると真っ先になくなるものの代表的なものですから、非常時に慌てて買いに行かなくても済むよう、平時からある程度備蓄しておきましょう。
こうした日用雑貨は食品と違って使用期限がないし、普段の生活でも必ず使用するのでいくら持っていても困らないとは思いますが、後述するように大量に買い込んだ挙げ句、整理整頓をしておかないと本当の意味での災害への備えになりません。
また、災害が発生すると自動車のガソリンの需要も増えるため、給油が困難になることがあります。
燃料タンクをカラに近いままで放置しておかず、普段から例えば「残燃料が半分を下回ったら給油する」などルールを決めておくとよいでしょう。

映像だけで判断しない
メディアの映像は全店舗の状況を反映してとは限りません。一部の報道だけに惑わされないようにして、自分が社会混乱の原因にならないようにしましょう。
公式情報の確認
悩んだときは、政府や自治体が発信する物資供給情報を確認しましょう。
非常時はデマや誤情報が飛び交いやすいです。見知らぬ人々が無責任に書き込むSNSの「情報」に飛びついた結果、自分が社会混乱の原因にならないようにしましょう。非常時のデマについてはこちらでも解説しています。
災害発生後の情報収集は何を信じれば良い?デマに惑わされず冷静に行動する方法とは
備える前に災害が来てしまったら
そうは言っても、たとえきっかけがデマだろうが何だろうが、今欲しい商品がすでに品薄になりつつあるなら、売り切れる前に買い貯めておこうとするのは、消費者個人にとっては合理的な行動といえます。
今欲しいものがないんだよ。すぐに買わなきゃ全部売り切れちゃう!
ね、ほら、やっぱりそうなっちゃう。
でも、やむを得ず買い出しに行くにしても「いつまで品薄が続くかわからないから」と爆買いするのはやめましょう。
発災後に爆買いしてはいけない4つの理由
理由① 社会混乱の原因になる
ここまで何度も述べてきたとおり、爆買いは買い占め行為そのものです。むやみな買い占めは連鎖します。その行動こそが社会混乱の原因になってしまいます。
理由② フードロスにつながる
食べ物の場合、大量購入すると賞味期限が一斉に切れることになります。それで処分することになれば大変もったいないですね。
「計画的に消費するから大丈夫」と思うかも知れませんが、災害発生までに計画的に備蓄できなかった人が果たして急に計画的に消費できるのでしょうか。
理由③ 他の人が困る
理由①とよく似たことですが、他の人が迷惑します。だから購入するにしても必要最低限の物資だけを購入し、他の人にも物資が行き渡るよう配慮しましょう。
理由④ 物資が避難の邪魔になる
無計画に物資を大量購入すれば、当然置き場所を取ります。
場所と状況によっては地震で荷崩れを起こして怪我の原因になったり、あるいは地震や火災発生時の避難経路の障害物になります。

備蓄物資はそれを使う人がいなくなれば何の役にも立ちませんし、備蓄物資が怪我や避難行動の妨げになったというのであれば完全に本末転倒です。
備蓄は計画的に行うべきであって、非常事態に接してから衝動的に大量購入するものではありません。備蓄については次の記事を御覧ください:
その備蓄で大丈夫?今すぐ始めるべき正しい災害備蓄の方法
知らなきゃ損!災害に備えた水の備蓄量はどれくらい?
まとめ
災害時の買い占めは、多くの人が「自分も買わないと困るのでは」と不安に駆られることで発生します。
こうした競争に巻き込まれないためには、普段から計画的に備蓄を行い、情報に踊らされないことが大切です。
従って、「災害が起きたら備える」のではなく、「いつ起きても困らないように備えておく」ことが、本当の防災。正しい知識と準備をもって、パニックに流されない冷静な判断を心がけましょう。
特に、わが国が災害大国であることを普段から意識し、災害の備えを着実に行っておけばいざというときにも慌てなくて済みます。こちらの記事も参考にしながら、できることから始めてみてはいかがでしょうか。