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なぜ私たちは防災を後回しにしてしまうのか?──備えの第一歩は“想像すること”から

最近、地震や風水害、土砂災害のニュースが多くて心配になりますよね。皆さまのお宅では災害への備え、できてますか?

うん、大事だということは想像つくけど、正直めんどくさいし、それに今ひとつその気にならないんだ…

ええ、わかりますとも、その気持ち。そういう人多いです。
確かに、仕事や家事に追われる日々の中で、つい後回しにしてしまうものだよね。

でもそれ、あなたが怠け者だからではありません。
実は、人が防災に本気になれないのには“理由”があります。

はじめに:なぜ人は防災を後回しにしてしまうのか?

災害への備えが進まない原因のひとつが、「正常性バイアス」。

これは、人がストレスから身を守るために、自分にとって都合の悪い情報を無意識に軽く見てしまう心理のことです。

人間は様々な環境変化にその都度過敏に反応していては疲れてしまうので、ある程度の限界までは「正常」と認識するよう、つまり「鈍感」になるよう人間に備わったプログラムなのです。
「うちは大丈夫」「まぁ何とかなるでしょ」 そう思ってしまうのは、ごく自然な心の反応なのです。

だから狭い日本でこれだけの災害が発生していても、それが自分の生活圏ではないと被災者には同情するけれども、一方で「次は自分の地域」とはどうしても受け入れられない心理が働くのです。

でも、災害はいつでもすぐそこに:わが国の最近の災害

ここ10年だけを見ても、日本のどこかで大きな災害が毎年のように起きています。

(気象庁、内閣府及び消防庁公表データから再構成)

ここには家屋の倒壊や床上浸水などは記載しておりませんが、ほとんど毎年のように日本のどこかで大きな災害が発生していることが分かります。

それに、被災者の中には、帰省中や旅行中に被害に遭った方も少なくありません。 つまり、どこにいても、誰にでも起こり得るのが“災害”なのです。

本当に「次は自分達だ」と思えば「災害の備えはめんどくさい、また今度」とは思わず、直ちに準備を開始するでしょう。

今準備をしていないということは「次は自分達だ」と心から思っていないと考えられます。

想像してみよう──自宅が揺れたら?

私はある自治体の防災課に勤務していたとき、防災センターで「地震体験装置」と「地震体験車」の維持管理+運用に携わっていました。

地震体験装置は地震を体験するための振動台で、都道府県や市町村が設置する「防災センター」に設置されていることが多いです。

富山防災四季彩館の地震体験装置
地震体験装置の例(富山防災四季彩館

また、地震体験車/起震車は、やはり同様に地震を体験するための装置ですが、地域の防災訓練などへ地震体験のデリバリーができるのが特長です。

地震体験車は起震車ともよばれる
地震体験車/起震車の例(イメージ)

地震体験装置も、地震体験車/起震車も、どれも自治体が運営する場合は無料で体験できます。

そんな中で、私は体験者には必ずこんな風に問いかけていました。

・今、この揺れが自宅で起きたと想像してみてください
・今日の揺れを、帰宅後もう一度思い出してください。いつか、あの揺れが現実になるかもしれません

これに対し体験者の多くはこう言うのです。

「ウチ、物が多すぎて…多分無理(笑)」
「こんなに揺れたらウチは潰れちゃうね(笑)」

ここで諦めてはいけません。
あなたが守りたい人の顔を、ぜひ思い浮かべてみてほしいのです。

地震で倒壊した家屋

こんな瓦礫の下に閉じ込められたら?と。

では、どこから始める?

やる気スイッチが入らないのは、スタート地点がわからないからかもしれません。
まずはここから始めてみてはいかがでしょうか。
時間がない人のための時短防災-【防災士厳選】まずは3点揃えてみよう!
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今日からでも始められます。

まとめ:備えは、“大切な人を思い浮かべること”から

災害への備えは、あなた自身と、あなたが守りたい人のためのもの。

「防災って難しそう」「まだ大丈夫でしょ」──そんな気持ちを持ってしまうのは自然なことです。 でも、少しだけ想像力を働かせてみてください。

あなたのその一歩が、きっと未来の安心につながります。

ABOUT ME
もげら47
自衛隊で大型輸送ヘリの機長として15年勤務。震災や林野火災など多数の災害派遣に出動。|その後、消防防災航空隊に転職し、消防防災ヘリの機長として10年以上にわたり山岳救助や空中消火活動に従事。|次いで2年間、地方自治体の防災課で防災関連の事務事業を推進するなど、防災一筋の人生。|現在はこうした経験を活かし、防災士ブロガーとして防災関連の情報を発信しています。|【保有資格】防災士・事業用操縦士(回転翼機+飛行機)・航空無線通信士・乙種第4類危険物取扱者・他| ■記事に登場する「わからんこ」や「ちびもげら」って誰? ■キャラクター紹介はこちら