はじめに

もし、山の中で道に迷ったり、ケガで動けなくなったときに119番に通報すると思うけど、その時どうやって自分の位置を説明したら良いんだろう?

心配いりません。
位置情報通知システム」といって、スマホや携帯電話には通報するだけで自動的にその位置を消防や警察に知らせる仕組みが備わっています。

この記事では、「位置情報通知システム」の仕組みと注意点、そして万一のために確認しておきたい設定や備えを、防災の現場経験からわかりやすく解説します。

スマホで通報すると“場所”が伝わる仕組み

2007年から全国で運用されている「位置情報通知システム」

スマートフォンや携帯電話で110・118・119番に通報すると、通信会社を通じて発信者のおおよその位置情報が自動的に消防や警察へ送られます。
この仕組みは総務省の指導で2007年(平成19年)に全国で導入が始まり運用されています。

これ実は、電気通信事業者が緊急通報を扱う上で制度として義務付けられた機能なのです。

「自分の居場所をうまく説明できない」という事態を防ぐための機能で、通報と同時に自動的に位置情報が送信されるので、地理不案内な場所から緊急通報をする場合に非常に強力なツールとして働いています。

GPSや基地局情報から位置を算定

どういう仕組なの?

位置の特定には主にスマホがGPS衛星から取得した緯度・経度データが使われます。

GPSか、要するにカーナビと一緒だね。
ところで緯度経度って何だっけ…中学校で習ったような気がするけど忘れちゃった。

地球上の座標です。詳しくはこちらで解説しています:
防災航空隊で要救助者の位置を特定するために使っている「緯度経度」とは?

ただし、谷底や屋内などGPS信号が届きにくい場合は、通信会社の基地局やWi-Fi電波の情報を利用して概略位置を算出します。

このため、誤差は数十〜数百メートルほど出ることがありますが、それでも救助隊が捜索を始めるには十分な手がかりとなります。

仕組みを確実に働かせるための設定

電話アプリに位置情報の利用を許可しておこう

スマートフォンの「電話」アプリが位置情報の利用を許可されていないと、通報時に位置が自動通知されません。
設定方法は次のとおりです。

  • Android:設定 → 位置情報 → アプリの権限 → 「電話」→「このアプリの使用中のみ許可」
  • iPhone:設定 → プライバシーとセキュリティ → 位置情報サービス →「電話」→「このAppの使用中のみ許可」

この設定を一度確認しておけば、通報時に正確な位置が伝わりやすくなります。

GPSをオンにしておくと精度が上がる

GPSは、地球を回る衛星からの信号をもとに位置を算出しています。
スマホのGPSをオンにしておくと、基地局情報に加えてより高い精度で位置が特定されます。
登山前に「位置情報サービスがオン」になっているか必ず確認しておきましょう。

バッテリーを切らさない工夫を

位置情報の測位や通話はバッテリーを多く消費します。特に山中など圏外になりやすい場所にいるとスマートフォンが基地局との通信を試みて繰り返し動作し、通信出力を高めるためです。

こうなると本当に大事な局面で電池が切れて緊急通報も位置情報通知もできなくなるため、山行においては何もなければ機内モードにしておいたり、モバイルバッテリーを携行することが非常に重要です。

“届かない場所”では位置も送れない

通話が成立しなければ位置は伝わらない

この位置情報通知システムは、通報時の通信を通じて位置データを送信しています。
そのため、当然ですが圏外では通報できないので位置情報は通知されません
どんなに正確なGPSデータを持っていても、通信回線がつながらなければ消防や警察には届かないのです。

自動で送られるとはいえ、“口頭での説明”も大切

電波状況によっては正確な位置が伝わらないことも

総務省も「GPSの受信状況や携帯電話の電波状況によっては、正確な位置を通知できない場合がある」と注意喚起しています。
このため、多くの消防本部では「自動通知に加えて、自分の位置を言葉でも説明してください」と呼びかけています。

どんな言葉で伝えればよいか

自分の見ている風景をそのまま口に出すのがコツです。

  • 「○○登山口から2時間ほど登った地点」
  • 「沢沿いの登山道で、赤い橋の近く」
  • 「尾根に出たところで○○山の山頂が見える」

こうした目印や地形の特徴を言葉で伝えることで、救助隊は地図と照らし合わせて現場を特定できます。

焦らず、“見えているもの”を言葉に

遭難時は冷静さを失いやすいもの。
そんな時でも「見えているものを素直に言う」だけで十分です。
通報先のオペレーターは、あなたの言葉をもとに救助体制を組みます。

山で通報する前に、今日からできる3つの準備

  1. 電話アプリの位置情報利用を「許可」に設定する
  2. GPSをオンにしておく
  3. モバイルバッテリーとオフライン地図を携行する

この3つを整えておくだけで、いざという時に位置情報通知システムが確実に作動します。

まとめ

  • 通報すれば自動的におおよその位置が通知される「位置情報通知システム」は、2007年から全国で運用中。
  • ただし、位置情報の許可設定や電波状況によっては精度が下がる
  • 圏外では位置情報を送れない。
  • 自動通知を信頼しつつ、言葉での説明も忘れない。

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ABOUT ME
もげら47
自衛隊で大型輸送ヘリの機長として15年勤務。震災や林野火災など多数の災害派遣に出動。|その後、消防防災航空隊に転職し、消防防災ヘリの機長として10年以上にわたり山岳救助や空中消火活動に従事。|次いで2年間、地方自治体の防災課で防災関連の事務事業を推進するなど、防災一筋の人生。|現在はこうした経験を活かし、防災士ブロガーとして防災関連の情報を発信しています。|【保有資格】防災士・事業用操縦士(回転翼機+飛行機)・航空無線通信士・乙種第4類危険物取扱者・他|