どうも!もげら47です!
自衛隊で15年、防災航空隊で10年、自治体の防災課で2年、と防災一筋でやってきた防災士です。
登る前に、知っておいてほしい
山に登るなら、これは読んでおかないと危ない。
そう感じた本に、久しぶりに出会いました。
今回ご紹介するのは、「ドキュメント 道迷い遭難」(羽根田治著)
この本は、実際に遭難した人たちのインタビューをもとに、
“道に迷って遭難に至るまでの過程”を克明に描いています。
なぜ人は「戻れなくなる」のか?
なぜ「冷静な判断」ができなくなるのか?
その心理のリアルが、臨場感とともに押し寄せてきます。
登山者にとって、地図や装備と同じくらい大切な「心の装備」になる本です。
書籍情報
- 書 名:「ドキュメント 道迷い遭難」
- 著 者:羽根田治
- 出版社:山と溪谷社
- 発行年:2006年
- ISBN:9784635045233
この本、こんな人に読んでほしい
- ソロ登山・低山ハイキングに出かける人
- 「ちょっと迷ったくらいなら大丈夫」と思っている人
- 家族で登山を計画している人
- 遭難対策の知識を“行動の選択”に落とし込みたい人
- 登山のリスクを心理面からも理解したい人
「パニックになっていることに気づけない」←これが一番怖い
本書に登場する遭難者の多くが、口をそろえてこう語ります。
「そのとき、自分では冷静に判断しているつもりだった」
ある人は沢を下り、滝壺に飛び込み、結果としてかかとを粉砕骨折。
しかし本人は「よく考えて、最善の判断をしたつもりだった」と言うのです。
得てして、人はパニックになると最悪の選択を取りがちです。
なぜか。
それは人は、極限状況では自分の異常に気づけないからです。
それが「道迷い遭難」の本質なのだと、読んでいて背筋が冷えました。
●引き返すタイミングは、あとになればなるほど難しくなる
「おかしいな」と思いながらも、「もう少し進めば道に出るかも」
そう考えてしまうのが、人間です。
でも一歩一歩進むごとに、退路は遠ざかっていきます。
沢や崖、藪に囲まれて、気づけばもう疲労困憊して行動不能。
防災ヘリの現場で捜索していたとき、こういう状況で救助要請をしてくる登山者は後を絶ちませんでした。
「沢に降りない」「おかしいと思ったら引き返す」
これ、当たり前で山歩きをする人にとっては常識なのに、当事者になると中々できないものです。けれどもこれが生死を分けるのです。
子どもは、親を見ている
高校生の娘と5日間さまよった父娘のエピソードも心に残りました。
救助後、娘はこう語ります。
「そんなに心配していなかった。お父さんについていけば、絶対に助かると思っていた」
私自身、双子を連れて登山し、迷いかけた経験があります。
そのとき、彼らは何を感じていたのか。
当時自分は冷静を装っていましたが、親としての責任の重さを、この言葉が静かに突きつけてきます。
無傷で帰ったのに、バッシングを受けた遭難の例
30人以上の高齢者パーティが山中でビバークした例では、全員が無事に下山。
けれど、マスコミが「多数遭難」と報じ、リーダーはひどいバッシングを受け、精神を病んでしまいました。
「何が起きたか」よりも、「どう伝わったか」で人を追い詰める」──
登山の怖さは、山の中だけにあるとは限らないと気づかされます。
山のことを何も知らない人々が大騒ぎし、誰かを血祭りにあげることが目的化した報道の恐ろしさ。特に最近は遭難者を「自己責任」として制裁したがる風潮もあり、考えさせられます。
この本の魅力まとめ
- 実際の遭難事例だからこそリアル。自分事として読める
- 道迷いに陥る心理の変化が克明に描かれている
- 読めば読むほど、「迷わないための行動」が明確になる
- 家族登山や初心者にも役立つエピソード多数
- 登山者への警鐘として、これ以上ない一冊
おわりに:山に入る前にこの本を読もう
「ドキュメント 道迷い遭難」は、ただの読み物ではありません。
これは、山で命を守るための“心のシミュレーション”です。
読めば確実に、あなたの登山意識を変えてくれるはず。
この本を読んでから登るかどうかが、「生きて帰れるか」を分けることもある。
自信を持って強くお勧めします。