どうも!もげら47です!
自衛隊で15年、防災航空隊で10年、自治体の防災課で2年、と防災一筋でやってきた防災士です。
今回ご紹介する本は、富山県警山岳警備隊に所属する実在の隊員たち一人ひとりに焦点を当てた、まさに“現場からの声”を記録したノンフィクション「遭難者を救助せよ!」です。
現代の山岳救助のリアルを、緊迫感と共感をもって追体験できる一冊です。
書籍情報
- 書名:遭難者を救助せよ!
- 著者:細井 勝
- 出版社・発行年月:山と溪谷社・2016年10月
- 著者プロフィール:登山専門誌『山と溪谷』元編集長。長年にわたり山岳救助や登山安全啓発に尽力。
こんな人におすすめ
- 山登りをしているが、救助の現実には詳しくない人
- 防災・救助の現場に関心がある学生・若手社会人
- 自衛官・警察官・消防士など、命と向き合う現場にいる人
- 「プロフェッショナル」とは何かを知りたい人
本書の着目ポイント
富山県警山岳警備隊という“国内最高峰”の存在
本書を読むまで、恥ずかしながら私はこの富山県警山岳警備隊のことをあまり知りませんでした。名前は聞いたことある程度で。
しかし彼らは、知る人ぞ知る、雪山・急峻・悪天候という条件の中でも人命救助を可能にする、国内屈指の“山のプロ”たち。中には他県からその技術を求めて転籍する警察官もいるという事実に、まず驚かされました。

一人ひとりの“人生ごと”描かれるドキュメンタリー形式
隊員たちの回顧録は、単なる救助エピソードにとどまらず、彼らが何を思い、何を背負い、どんな覚悟で山に入っているかを克明に描き出します。読んでいるうちに、こちらも息を呑むような気持ちになります。
ここは注意
- 本書の内容は1990年代〜2000年代初頭の事例が中心です。最新の技術や組織体制とは異なる部分があるかもしれません。
- 紹介されているのは「超一流のプロ集団」なので、登山初心者向けのノウハウ本ではありません。
しかし、それを補って余りある「人間の強さと弱さ」に触れられる本であることは間違いありません。
私の注目ポイント
印象的だったのは、積雪期の訓練中に事故に遭った高瀬隊員の言葉です。
「長年、警備隊の勤務についてきた自分がこんな事故を起こしてしまい、取り返しのつかないことをしてしまった。もし自分が死んでしまえば、三度殉職事故と騒がれ、最悪の場合、警備隊は解散されるかもしれない…」
これは、死にかけている本人の言葉です。普通なら「助かりたい」「家族に会いたい」と考えても不思議ではありません。それなのに彼は、組織の未来と、これから救われるべき誰かの命のために、自分を責めている。
私は防災ヘリで10年以上、山岳救助や捜索の任務に携わってきました。だからこそ、彼の言葉が骨の髄にまで染みる思いで、この言葉は、プロとしての矜持を胸に刻み直させてくれました。
もう一つ、黒部川で女子学生を背負って登攀する際の、横山隊員の行動も忘れられません。出産時に妻が痛みに耐えた話を聞かせたことで、要救助者の目に涙が浮かび、「ありがとう」と返されたエピソードです。
これは単なる救助ではありません。人と人との“生きようとする心”の交差です。これこそが、人命救助の本質だと思います。
まとめ
総合評価
- 読みやすさ:★★★☆☆(しっかりした文章量)
- 実用性:★★★☆☆(ノウハウというより意識啓発向き)
- 感動・没入度:★★★★★
- 防災知識の深まり:★★★★☆
- プロの覚悟に触れられる度:★★★★★
読後のアクション
- 山登りをする人なら、この本を読んで救助する側の現実を知ってほしい
- 災害対応に携わる人なら、自分の中の「プロとは何か」を問い直すきっかけになる
- 一般の防災意識を高めたい人にとっても、「現場の声」を聞くことで日々の備えの意味が変わるはず
最後に
富山県警山岳警備隊の存在を、あなたは知っていましたか?
国内最高峰の救助隊に学ぶ“本物の覚悟”は、防災を志すすべての人の心に刺さるはずです。
この一冊には、救助の現場に生きる人たちの「生き方」が詰まっています。
防災のプロを目指す人にも、ただ興味があるだけの人にも、ぜひ一度読んでほしい一冊です。
もちろん、ノンフィクションの読み物としても十分楽しめるので、自信を持ってお勧めします。
あわせて読みたい:
▶️元防災ヘリ機長が全てお答え!防災ヘリによる山岳救助の疑問と回答!
▶️【防災本レビュー】「生還 山岳遭難からの救出」(羽根田治)-7人の生存者が語る“本当に必要な備え”とは?