はじめに

災害が発生すると停電したり、避難所に行ったりするよね
そうなるとスマホの充電がちょっと心配になるんだけど

確かに、今やスマホは平時有事問わず、多くの人にとって必要不可欠なツールになりました。特に、ガラケーの時代から私は避難所のコンセント争奪戦の光景を数多く見てきました。その傾向は現在でもほとんど変わっていませんし、今後も変わらないでしょう
今回は、こうしたことを踏まえ、災害への備えの一つとして、スマホの電池をできるだけ長持ちさせる方法について考えてみることにしましょう。

スマホは「非常時の装備」である

改めての確認になりますが、皆様ご存知の通り、災害時のスマホは単なる通信機器ではありません。

  • 家族や知人との安否確認
  • 気象警報や避難情報の取得
  • 地図アプリによる避難経路の確認
  • 夜間のライト代わり
  • 支援情報や行政発表の確認

けれども、これらすべて電池が残っていることを前提に成り立っています。

内閣府系の避難所環境ニーズ調査では、飲料水や食料と並んで、スマホや携帯電話の充電に対する関心が高いことが報告されています。
「避難所のスマホ充電」に高い住民ニーズ(自治体通信 ONLINE)

また、民間調査でも「避難所でスマホの充電ができず困った」という声が挙がっています。
2018年自然災害被災者に聞いた、防災についてのアンケート

つまり、災害時においては「スマホのバッテリーをどれだけ維持できるか」がボトルネックになるということです。

ここからは災害対応を念頭に、スマホのバッテリーをできるだけ長持ちさせる工夫について紹介していきたいと思います。

バッテリーの寿命を伸ばす

まずは、バッテリーの劣化を防止する方法です。バッテリーが劣化するということは容量が小さくなるということ。容量を新品の状態からできるだけ減らさないようにする工夫が必要です。

リチウムイオンバッテリーは、使い方が寿命に影響するので普段からの使い方にも気を使いましょう。

バッテリー寿命は充放電の回数で決まるって言われるから、できるだけ放電させてから充電するようにしてるよ!

それ、必ずしも正解ではないかもしれません。

極端な放電と満充電の往復がバッテリーを劣化させる

リチウムイオンバッテリーの劣化を防ぐには、適切な電池残量を維持するために適切なタイミングで充電を開始し、満充電ではなく80%程度で充電を停止することが有効です。

「充電放電サイクルの回数で寿命が決まる」からと、充電回数を減らすため0%近くまで使い切って、100%まで充電する人もいるようですが、そのやり方だと却って寿命を縮めることになります。

極端な放電と繰り返しの満充電はバッテリーの寿命を短くする
極端な放電と繰り返しの満充電はバッテリーの寿命を短くする

昔は「こまめな継ぎ足し充電は電池に悪い」と言われていましたが、それは昔の「ニッケル・カドミウムバッテリー」の話。放電しつくす前に充電を開始すると、「メモリー効果」といって、電池容量が小さくなる特性がありました。

しかし現在のスマホに使用されるリチウムイオンバッテリーは継ぎ足し充電に強い設計になっているので、その心配は無用です。

20% & 80%運用

“適切なタイミング”って何?
だって充放電のサイクルで寿命が決まるんだから、いつ充電したって同じように消耗するんじゃないの?

充電回数というのは、100%まで充電した場合にカウントされる種類のものです。80%程度で充電を止めておけば、サイクルへの影響を小さくすることが出来ます。

もちろん、100%まで充電したからといって即座に劣化が始まるわけではありません。問題は、その状態で長時間置いておくことです。満充電や深い放電状態を継続する時間が長いほど、リチウムイオンバッテリーの劣化が進行します。

だから、80%前後で充電を止める運用であれば、日常使用には十分な残量を確保しつつ、バッテリーの劣化も最小限に抑えることが出来るというわけです。そして、残量が20%程度に低下する前に充電を開始するようにして、極端な放電状態を避けることでバッテリーの寿命を伸ばすのです。

充電しながらの使用を避ける

動画の視聴の際、バッテリー残量を減らしたくないからということでやりがちですが、充電しながら放電するとバッテリーが熱を持つことがあります。この熱によって劣化が進行します。

ただし、機種によっては「ダイレクト給電」といって、外部電力は充電ではなくスマホ使用に必要な電力だけに振り分けられる機能を有しているものもあるため、必ずしも充電しながらの運用がダメというわけではありません。

この辺は機種ごとに変わるため、詳しくは取扱説明書をご確認ください。

就寝時を利用して適切に充電する

いつやってくるかわからない災害に備えるには、バッテリーの残量を適切に維持しておく必要があります。多くの人は就寝時にスマホを充電していると思われますが、やはりその方法が現実的な最適解と言えるでしょう。

「就寝時」「充電」で検索するとネットでは「危ない」とか「バッテリーが劣化する」という記事で溢れかえっているよ?

もちろん承知しています。
だから、先程述べたように100%まで充電するのではなく80%程度で充電をストップするように設定しておくのです。

ほとんどすべてのスマホには、バッテリーの劣化を抑えるための機能が搭載されています。

  • iPhone:最適化されたバッテリー充電
  • Android:80〜90%で充電を止める上限設定

これらを有効にしておけば、“備えながら、傷めにくい”充電運用が可能になります。布団が被さると発熱の原因になるので置き場所には注意が必要です。また、充電上限の設定ができないのであれば、就寝時の充電は止めたほうが良いかもしれません。

災害備蓄としてのモバイルバッテリーについて考える

モバイルバッテリー

スマホの充電の仕方が大事なのは分かったよ。けれども、停電が長引けば、予備電源としてモバイルバッテリーを準備しておいた方が良いよね。

モバイルバッテリーは確かに有効なツールですが、災害用備蓄として保管しておくのであれば、注意事項がいくつかあります。

満充電保管はNG

モバイルバッテリーもスマホのバッテリーと同じリチウムイオンバッテリーです。だから先に述べたように、満充電のまま長期間放置すると、劣化が進みます。

だから保管時は、次の点に注意しましょう。

  • 残量:50~60%程度
  • 保管場所:高温にならない、直射日光の当たらない場所

定期点検のすすめ

  • 半年に1回は残量をチェックし、充電してみる(その後適切な残量まで放電)
  • 異常な発熱や膨張がないか確認する

保管環境

涼しく、かつ落下による衝撃を与えないような場所に保管しておきましょう。

車で避難することもあるかも知れないから、非常持ち出し袋と一緒に車の中においておこうかと思ったんだけど…。

車内は、夏暑く、冬は寒くなるので避けましょう。
リチウムイオンバッテリーは高温にも低温にも弱く、特に35℃を超えるような高温環境下では急速に劣化が進行します。それだけではなく最悪の場合は発火リスクにもつながります。

もし車中泊をすることも想定しているのであれば、車から電源が取れるわけだし、車内にモバイルバッテリーを置いておく必要性ってあるのかなあ?

モバイルバッテリーは災害備蓄に向いているのか

保管時に残量を50~60%にしておくとか、時々残量をチェックするとか、保管環境を選ぶとか、モバイルバッテリーも結構面倒だな。
そう考えると、ひょっとしてモバイルバッテリーって備蓄に向いてない?

向いているかどうか、というのは上に述べたような注意事項を把握したうえでちゃんと管理できるかどうか、にかかっていますね。

予備の電源は何が最適??

モバイルバッテリーがダメなら…あ!そうだ!手回し発電機ならどうだろう!?

防災ラジオ

防災ラジオによく付属しているような手回し発電機でスマホを充電するのは、はっきり言って無理です。こちらをご覧ください:
防災ラジオの手回し発電でスマホは充電できない?実際に試してわかった限界と理由

ええ…?じゃあどうすりゃいいの?

お勧めなのは、
①スマホのバッテリーを最大限に活かす工夫をする
②予備の電源として長期保存可能な乾電池と乾電池用モバイル充電器を準備しておく
といったところです。

電池式モバイル充電器
乾電池式のモバイル充電器なら管理はとても楽になる

このタイプの充電器は構造が極めてシンプルなので、コンビニでも安価に手に入れることができます。

それでは次に最も本質的な、スマホのバッテリー節約のためのコツを紹介します。

災害時に“生き残る”省電力ルール集

予備電源を準備するのも大事ですが、スマホの消費電力を節約することがより本質的なアプローチです。

① 省電力モードは平時から使って慣れる

災害に見舞われてから慌てて設定を探すのではなく、平時から“省電力で使う癖”をつけておば、いざというときに慌てなくて済みます。

バッテリーセーバーや低電力モードを普段から使うようにしておきましょう。普段は普通のモードで使いたい人も、一度実際に設定してみて

  • どの機能が制限されるのか
  • 何が使えなくなるのか

を体験しておくと、いざというとき円滑に使用できます。

② 画面設定を制する者が電池を制する

画面は、スマホの中で最大の電力消費源です。

  • ダークテーマをON(有機EL機種では特に効果大)
  • 明るさは自動調整
  • 自動ロック時間を設定(例:30秒~1分)

③ 通信は必要なときだけ使う

電波が弱い場所では、スマホは電波を探し続けて電池を消耗します。

  • 圏外や不安定な場所では機内モードON
  • 通信が必要なときだけ解除

④ バックグラウンド動作を止める

  • 位置情報:使用中のみ許可
  • クラウド同期:自動アップロードOFF
  • SNSやニュース:プッシュ通知制限

⑤ アプリは“荷物”として管理する

使っていないアプリでも、
定期的に通信や更新を行います。

  • 半年以上使っていないアプリは削除

⑥ 音と振動を切る

  • キーボード音OFF
  • バイブOFF

まとめ

災害時、スマホは単なる通信機器ではありません。
情報を受け取り、家族とつながり、次の行動を判断するための「装備」です。

モバイルバッテリーを備えることも大切ですが、まず意識したいのは、今ある電池をできるだけ長く生かすこと。

0%まで使い切らない、満充電で放置しない、平時から省電力設定に慣れておく。
それだけでも、災害時に使える時間は大きく変わります。

備えとは、物を増やすことだけではありません。
使い方を変えることも、防災のひとつです。

ABOUT ME
もげら47
自衛隊で大型輸送ヘリの機長として15年勤務。震災や林野火災など多数の災害派遣に出動。|その後、消防防災航空隊に転職し、消防防災ヘリの機長として10年以上にわたり山岳救助や空中消火活動に従事。|次いで2年間、地方自治体の防災課で防災関連の事務事業を推進するなど、防災一筋の人生。|現在はこうした経験を活かし、防災士ブロガーとして防災関連の情報を発信しています。|【保有資格】防災士・事業用操縦士(回転翼機+飛行機)・航空無線通信士・乙種第4類危険物取扱者・他|