※この記事はプロモーションを含みます。
この間、防災ラジオを買ったんだ!
手回し充電機能が付いているから、あれがあればスマホの電池が無くなっても安心だ!
喜んでいるところ水を差すようで申し訳ないのですが…
実は手回し発電機でスマホは充電できません。
実際に試してみればわかりますが、10分間回しても1%増えるかどうかで、ときには逆に減ってしまうこともあります。
この記事では、防災ラジオに必ずと言っていいほどセットになっている「手回し発電機」でスマホを充電できない理由についてできるだけ分かりやすく解説します。
手回し発電機ではスマホが充電できない3つの理由
理由その1:人の指で出力できる電力が小さすぎるから
スマホの充電には「一定以上の電力」が必要で、標準充電で10W(=5V×2A)くらいの電力が必要になります。
ところが、よくある防災ラジオに付いている手回し発電で人がハンドルを回して作れる電力は 2〜3W程度が限界で、全く足りていません。
え?どういうこと?人間ってもっとパワー出せるよね?
階段を上ったり自転車をこいだりしてるじゃない。
人間はもっと大きなパワーを出すことはできますが、小さなハンドルを指でつまんで回転する以上、指先で伝達できるパワーの限界が先に来ます。やってみればわかります。
だから両足を使って自転車をこぐのとはわけが違うのです。
これは構造上どうしようもできません。もしクランク長が長く、かつハンドルが手全体で握れるほど大きければその分伝達できるパワーも大きくなりますが、それでは防災ラジオに求められる「コンパクトさ」が失われてしまいます。
というわけで、この時点でスマホをしっかり充電することが極めて困難であることがわかります。
理由その2:電圧が安定しないため、スマホが充電を止めてしまうから
手回し発電は、人が回す速さが少し変わるだけで電圧が変動します。定電圧回路が機能するので電圧の上限値はコントロールできますが、回転数の低下による電圧低下はどうしようもできません。
実はスマホの充電回路は、「5V前後で安定しているかどうか」をとても重視しており、電圧が不安定だと電池保護のために充電を止めてしまいます。
だから一生懸命手回し発電機を回して充電しようとしても、電圧が変動するたびにスマホが回路を遮断してしまうため充電が全然進まないというわけです。
ちなみに、スマホが充電回路を遮断したかどうかはハンドルを回すトルク(回転力)が軽くなることで簡単にわかります。ハンドルが重ければちゃんと充電できていますが、スマホが電圧変動を嫌って遮断するとハンドルが急に軽くなります。
理由その3:スマホ自体が使う電力で消費されてしまう
スマホは、充電している間にも電力を消費します。
- 画面の点灯
- バックグラウンド処理
- アプリの待機動作
- 起動時の大きな電力消費(特にiPhone)
これらが重なると、あなたが手回しで作った電力よりもスマホの消費電力のほうが多くなる
ことが起こります。
これらの結果、
「10分回しても1%も増えない」
「むしろ減る」
という、なんともやる気を無くす恐るべき現象が起きます。
実際に充電を試みたレポート
私自身が試しに手回し発電機で手持ちのスマホをいくつか充電してみた感想を述べます。

とにかく体力を使う
まず、自分で自宅にある手回し充電器付きの防災ラジオでスマホ充電を30分ほど頑張ってみました。すると、ハンドルを10分ほども回し続ける内に、右手の指から手首、そして前腕が疲労してきます。
ついでその後小4の娘にも試してもらいました。こちらはそのときの模様です。
しかも多くの防災ラジオはハンドルのつまみが小さく握りにくい形をしているため、手が滑ってまったりして一定の速度で回転を維持するのが難しく、その上長時間回すと指先が痛くなります。
さらに右手でハンドルを回す一方で、左手も同じ力でずっと本体を支えていなくてはならないためこちらも握力が辛くなってきます。
この手回し発電機を使用するのは災害時でしょうから、体力を温存しなくてはならない中、こうしたことで疲労するのは避けたいところです。
私の試したところでは10分以上回転させて、ようやく充電率が1%増えるかどうか、といったところです。
スマホの表示では、電池残量8%から100%充電までの所要時間が「1日+16時間」と表示されており、まるで砂漠の真ん中に一人置き去りにされたような気分です。

回すと結構な“音”が出る
ギュインギュインと作動音がそこそこ大きく、長時間避難所で回し続けるのはためらわれます。
ストレスの溜まっている避難者が集まったところでは、少々のことがトラブルの原因にもなるかもしれません。避難所の退屈しのぎに他の避難者と敵対的な会話を楽しみたい向きには良いかもしれませんが、そうでない人は止めたほうが良いでしょう。
両手が長時間ふさがる
発電中は両手が完全に拘束されます。つまり発電以外のことが何もできなくなるのです。もちろん、肝心のスマホを見ることは出来ません。仮に体力的に(しかも電圧を一定に保ちながら)それが可能だったとしても、上で述べたように40時間休むことなくこの労働だけに拘束されるとしたら、どうでしょうか。
これらを踏まえると、手回しでスマホを充電し続けるのは現実的ではないと感じました。
もし、お手元に手回し充電器付き防災ラジオがあれば、ぜひ一度実際に試してみることをおすすめします。
防災ライオの比較記事は多いですが、実際に手回し充電を試しているケースは意外と少ない印象です。
他の防災ラジオでも、結果はほぼ同じです
「もっといい機種なら充電できるのでは?」
と思われるかもしれませんが、基本構造が同じなので手回し充電に関わる次の3つの特性はどの機種を使っても共通です。

- 指で伝達できる出力には限界がある
- 構造的に発電電力が不安定になりやすい
- スマホは電圧変動が大きいと充電を受け付けない
というわけで、ハンドルが操作しやすいなど多少の違いはあっても、劇的な改善は期待できません。
じゃあ、どうしてどの防災ラジオでも手回し発電機能を搭載しているの?
これは推察ですが、“多機能で安心”というイメージを持たれやすいため、仕様として手回し発電を残しているのではないでしょうか。
どの企業も手回し発電の限界は知っているはずですが、一方で消費者は手回し発電が有効だと信じ込んでいるわけですから、自社製品だけ手回し発電機能を取り去ってしまえば、売れなくなるおそれがあります。
ソーラーパネル搭載の防災ラジオならどうかな?
携帯ラジオについているような極小のソーラーパネルで、本当に充電できるかは疑問です。ソーラーパネルの面積は、スマホ充電には最低でもA4サイズくらいは必要と言われているので、これも多機能に見せるための工夫ではないでしょうか。

スマホ充電には手回し以外の方法を準備しよう
ここまで見てきた通り、手回しによるスマホ充電はあまり現実的ではなく、本当の緊急時専用と位置づけたほうが良さそうです。
しかしスマホは災害時の大切な連絡手段ですから、その電源は手回しだけに頼らず複数の手段で確保しておくと良いでしょう。
大容量のモバイルバッテリー
現実的で信頼性があります。
10,000mAh〜20,000mAhのものが適しています。
ただし、モバイルバッテリーに使用されるリチウムイオン電池は満充電で放置しておくと劣化することが知られているため注意が必要です。
もし非常持ち出し袋に入れておくのであれば、その中身の定期点検に併せて容量を確認すると良いでしょう。
乾電池式USB充電器
単三電池を入れて使うタイプであれば、本体も単三電池もコンビニや100円ショップで簡単に入手できます。
長期保管にも強い電池と組み合わせれば災害用備蓄として適しています。

ただし、当たり前ですが単三電池の電力容量以上に充電することは出来ません。つまり普段使用している商用電源と同じというわけにはいかず、満充電は期待できません。
車(シガーソケットなど)での充電
車が無事であれば非常に頼りになります。
ただし、災害時はガソリンが特に貴重になるため、ガソリン節約のためにも充電のためだけにエンジンを掛けるのではなく、移動など他の所要と併せて使用すると効率的でしょう。
エンジンかけずにACC onで充電したら?
短時間なら大丈夫かもしれませんが、万が一にも自動車のバッテリーを上げてしまわないよう、十分に注意してくださいね。災害時ですから、自動車の補充電や修理は平常時と同じには行きません。
ソーラーパネル+ポータブルバッテリー
天気に左右されますが、長期停電時のバックアップとしては最も頼りになるでしょう。
ただし、いずれも一定のサイズがないとスマホの充電には使用できません。さりとて十分な性能をもつ組み合わせとするならば、その時点で非常持ち出し袋に入るサイズではありません。
一方、避難所に持ち出すのではなく在宅避難用として使用するのであれば非常に有用なツールになるでしょう。
それでも防災ラジオは価値がある
じゃあ、手回し充電器付き防災ラジオなんて要らないってこと?
せっかく買ったのに…。
いえいえ、誤解しないでください。「防災ラジオ」は情報収集ツールとしては非常に優秀だし、必須アイテムです。ここは間違いありません。
ラジオはスマホに比べてずっと少ない電力で動くため、手回し発電で十分機能してくれます。なによりラジオは情報収集の手段としてはとても重要かつ有用なので、無駄になることはありません。
ただし、スマホを充電する道具としては不向きというだけです。
まとめ
手回し発電でスマホを充電できない理由は、
- 作れる電力がスマホの必要電力に届かない
- 電圧が安定せずスマホが受け付けない
- スマホ自体の消費電力が上回ってしまう
という、避けられない構造にあります。
これはメーカーの問題ではなく、“人間の腕とスマホの仕組み”の問題です。
スマホを手回し充電で満充電にしようとするのは、例えて言うなら「バスタブをコップで満たそうとする」ようなイメージです。技術的に不可能ではありませんが、現実的ではないということです。
ラジオはラジオとして活用し、スマホの電源は別の方法でしっかり確保する。
この考え方が、防災の備えとしてもっとも安心です。


















