基本知識

防災航空隊で要救助者の位置を特定するために使っている「緯度経度」とは?

はじめに

救助の現場では、「要救助者の位置」を正確に把握することが、スムースで素早い救助につながります。その位置を正確に把握するためのツールが「緯度経度」。
この記事では、緯度経度の意味と、ネットがなくても自分の位置を調べる方法を解説します。

緯度経度とは?(地球上の“座標”)

緯度と経度は、地球上の任意の地点を表すための「座標」、数字で表す世界共通の「住所」です。

  • 緯度(Latitude):赤道からの南北の角度
  • 経度(Longitude):ロンドンにあるグリニッジ天文台(※)を基準とした東西の角度

※正確には天文台から100mほど東にズレていますが、あまり本質的な話ではないのでここでは詳しくは述べません。

緯度は赤道からの角度で、北向きに図った角度を北緯、南向きを南緯と言います。

経度本初子午線からの角度で、東向きに図った角度を東経、西向きを西経と言います。

緯度経度の説明

我が国の付近における緯度経度は下図のようになっています。

画像出典:地理院地図 電子国土webより

おなじみのカーナビは、地球上の緯度経度をGPS衛星からの信号を受信することで自分の位置を把握できるようになっています。

なお、地球上での1度は約110kmにもなるので、例えば「北緯36度」などと言っても粗すぎて地点が特定できません。そこで、これをさらに細分化する必要があります。

どうやって細分化するかというと、「時刻」と同じようにします。
1度=60分
1分=60秒

このように表現する方法を「60進法」と言います。
「緯度1秒」の長さはだいたい30mくらいです。これより細かく表現するときは、少数を使います。
例えば渋谷駅にある忠犬ハチ公像のある場所の緯度経度は次のように表されます。

北緯35度39分32.7秒、東経139度42分02.3秒
このような書き方もします:
35°39’32.7″N 139°42’02.3″E

忠犬ハチ公像

表記には2種類あります

先ほど、緯度経度は60進法で表現すると言いましたが、10進法で表現することもあります。先程の忠犬ハチ公像は、次のように表現することもできます:

35.65925834075N, 139.70062930585E

スマホアプリやGoogleマップではこの形で表現されることが多いのですが、区切りが分かりづらいため、読み間違いに注意が必要です。

要救助者のところまでどうやって到達するのか

消防本部の通信指令室では位置情報通知システムによって通報者の位置を緯度経度で把握します。この数値を防災ヘリコプター要請時に消防防災航空隊に伝達するのです。

位置情報通知システムについてはこちらの記事をごらんください:
山で遭難したらどうやって場所を通報する?―スマホが“あなたの場所”を自動で知らせてくれる位置情報システムとは

緯度経度がわかればもうこっちのもの。消防防災航空隊では聞き取った緯度経度を地図ソフトなどに座標を入力し場所を特定します。

また、機体に搭載されたGPS装置に緯度経度を入力すれば、機内で目的地までの方位と距離を把握できるのです。

スマホで緯度経度を確認する方法

ちなみに、自分の居場所を緯度経度で表すにはどうしたら良いでしょうか。

Google Mapで簡単に調べることができるのですが、ネットに繋がっていないと緯度経度情報と自分の位置は表示されますが地図が表示されません

けれども山の中などネットに接続できないオフライン環境でも緯度経度と地図を確認する方法があります。

ネットに繋がらないのに、どうして緯度経度が分かるの?

ほとんどのスマホにはGPS受信機が備わっています。カーナビと同じで専用の人工衛星が補足できる環境であればネットとは無関係に自分の位置がわかります。

地図はどうやって表示するの?

Google mapであれば事前に「オフラインマップ」機能を使って、使いたい地域の地図をダウンロードしておきます。
また、YAMAPであれば、ネットに繋がる環境下で予め電子地図をダウンロードしておきます。これでGPSと組み合わせて自分の位置が正確にわかります。

ただし、GPSも万能ではありません。通常では誤差は数m程度ですが、補足できるGPS衛星の数が少ないなど状況によっては100mを超えることもあると言われているので注意が必要です。

YAMAPの場合
 1. 事前に地図をダウンロードしておく
 2. 現在地アイコンをタップ
 3. 画面下部に「緯度・経度」が表示されます
 → 通信がなくてもGPS測位が可能

画像出典:YAMAP MAGAZINEより

まとめ

今回は緯度経度=地球上の座標について説明してまいりました。仕組みを知って、山岳遭難防止などに役立てていただければと思います。

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もげら47
自衛隊で大型輸送ヘリの機長として15年勤務。震災や林野火災など多数の災害派遣に出動。|その後、消防防災航空隊に転職し、消防防災ヘリの機長として10年以上にわたり山岳救助や空中消火活動に従事。|次いで2年間、地方自治体の防災課で防災関連の事務事業を推進するなど、防災一筋の人生。|現在はこうした経験を活かし、防災士ブロガーとして防災関連の情報を発信しています。|【保有資格】防災士・事業用操縦士(回転翼機+飛行機)・航空無線通信士・乙種第4類危険物取扱者・他| ■記事に登場する「わからんこ」や「ちびもげら」って誰? ■キャラクター紹介はこちら