どうも!Mogera47です!
自衛隊で15年、防災航空隊で10年、自治体の防災課で2年、と災害対策一筋でやってきた防災士です。
大規模災害が起こるたびに「〇〇集落が孤立」といったニュースを耳にするけど、具体的にどんなことになるの?どうやって備えるの?
じゃ今日は孤立集落とその備えについて一緒に勉強してみよう
この記事では、防災課で孤立集落支援事業にも関わってきた筆者が、自衛隊と防災航空隊での現場経験を交えてリアルに解説します。
「集落が孤立する」とはどんな状態?
一般的に「孤立」とは、自動車などで地域外と行き来できなくなる状態を指します。たとえば地震や豪雨によって、唯一のアクセス道路が土砂崩れや橋の崩落で寸断されると、その地域は孤立状態に陥ります。


このような孤立が発生しやすいのは、山間地や海岸線の集落など、元々アクセスが限られている場所です。
孤立してしまうと、外部支援が届かず、住民が自力で生活を維持しなければならなくなります。怪我や病気をしても、すぐに医療サービスを受けることができなくなります。
実際に起こった孤立の例
災害で集落が孤立した事例は過去多く存在します。
- 2004年 中越地震:小千谷市、旧山古志村など7市町村61地区で1938世帯が孤立。
- 2018年 平成30年7月豪雨 土砂崩れが多発し多くの地区が孤立
- 2020年 令和2年7月豪雨 熊本県内で多くの地区が孤立
- 2021年 令和3年7月豪雨 静岡県熱海市などで大規模な土石流→アクセス不可能に
- 2024年 能登半島地震 土砂崩れのため多くの道路が寸断され多数地域が孤立
このように、孤立状態は地形やアクセス道路の条件によっては、数日から長ければ数週間続くこともありえます。
孤立したとき、住民はどうすればいい?
「孤立していること」に気づくことから始まる
多くの場合、最初に「道が通れない」と気づくのは、地域の誰かです。
「向こうの町へ行こうとしたら通れなかった」「こっちも通れない」といった異変に気づいた人が、その情報を地域全体に共有することで、初めて自分たちが孤立したことに気づきます。
孤立したことが分かった時点で、食料を計画的に消費していく節約モード(災害モード)に切り替えなくてはなりません。知らないで「今週分の食料品の買い出し日」まで消費し続けてしまうと後が大変です。
行政はすぐに来られない。だからこそ備えが命綱
アクセスが遮断されているということは、消防も警察もすぐには来られないということです。
能登半島地震では、自衛隊が食料や水を背負って徒歩で山を越えて運び入れるという救援も行われました。
ただし、孤立してもすぐに命の危機が迫るとは限りません。日頃から3日以上の備蓄があれば、まずはそれで乗り切ることが可能です。
水道が通じてさえいれば、飲食の方は何とかなります。
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ただし、多くの場合は孤立解消の見通しが立ちません。ということは、備蓄食料などの消費計画が立てづらいということ。なので、備蓄食料は最大限引き伸ばしながら消費していく構えを取るとよいでしょう。これは他の災害でも同じことが言えます。
急病やけが人が出た場合は?
通信が確保できていれば、119番通報が可能です。
救急車は来ることができませんから、その代わりに防災航空隊に出動を要請することになります。ヘリコプターがあれば、救急搬送や支援物資の空輸ができます…と言いたいところですが、ただし、ヘリが降りられる場所が必要です。
ヘリはどこにでも降りられるわけじゃない
ヘリが離着陸できる場所とは
「空き地があればヘリが降りられるだろう」と思っていませんか?
それは半分正しくて、半分間違っています。実際には以下のような条件をすべて満たす必要があります:
- 機体サイズに応じた十分な広さがあること
- 周囲に障害物(電線・木・建物など)がないこと
- 離着陸の進入経路・脱出経路が確保できること
- ダウンウォッシュ(ローターによる強風)への安全配慮がなされていること
余談ですが、昔流行った「エアウルフ」の基地のような「コップの底のような場所」には、危険すぎて実際にはまず降りられません。
【参考】Airwolfの基地はこんな感じです。
これは演出です。普通こんなところで離着陸しません。色々な事故のリスクが満載ですから。
ヘリが離着陸できなければどうするの
着陸できないとヘリは使えないってことなの?
着陸できない場合は、救助用ホイストを使用して吊り上げることもできます。
ただし、この場合はどうしても一人ずつになるため時間がかかります。
この救助用ホイストを使って、逆に、支援物資を吊り下ろすこともできます。
この場合も、着陸よりは時間が掛かるし、下ろすことの出来る貨物の量に制約が生じます。

孤立が長期間解消しない場合は?
往来のできない集落内で長期間生活することは無理があります。こういう場合は、やはりヘリコプターを使って地域内住民を避難させることになります。2005年の新潟中越地震では、筆者も孤立した山古志村から住民を救出したことがありますし、2024年の能登半島地震でもそのような活動が行われました。
期待の星?ドローンによる支援も進化中
近年は、ドローンによる孤立集落への物資輸送も注目されています。
2024年の能登半島地震では、医薬品の輸送にドローンが使われた事例が報道されました。

- ドローンはヘリよりも狭いスペースで離着陸が可能
- 積載量は少ないが、ピンポイントでの配送が可能
- 天候や電波環境に左右されるが、今後の発展に期待
今日では、全国各地、孤立集落支援を想定したドローン輸送の実証実験が進められています。
行政の取り組みと課題
筆者が防災課で勤務していた際には、こうした「孤立可能性のある集落」を事前に把握し、対策を進める取り組みにも関わってきました。
- 土砂災害警戒区域やアクセス路の状況から、孤立しやすい集落を事前把握
- 集落内人口、要配慮者の有無、備蓄状況など集落ごとの必要データの把握
- 災害時の迂回路確認や事前復旧プランの策定
ただし、道路そのものが消失するような大規模崩落の場合、復旧までに長い時間がかかるため、やはり住民一人ひとりの備えが要となります。
地域の協力体制がカギ
住民一人一人の備えが基本とは言うものの、集落ごと孤立してしまうような環境では、やはり一人で出来ることには限界があります。そこで重要になってくるのが、地域内のつながり。
普段から自治会・町内会のお祭り、運動会、町内清掃などで地域内の付き合いを積極的に行うことが、助け合いの土台となり災害時にはこれがとても有効に働くことが分かっています。


こうした地域内イベントで、テント、調理器具、発電機、拡声器などを使用することは、これら機材の使用方法を練習出来る上、機材の点検にもなります。最近は自治会・町内会を退会したり、自治会が解散に追い込まれる例も多いようですが、防災上の観点からは大きな課題となることが懸念されます。

「うちは関係ない」ではすまされない──孤立リスクのある地域の特徴とは?
「うちは山奥じゃないから大丈夫」と思っていませんか? でも、孤立は地名ではなく地形と条件で決まります。
以下のような地域は、特に孤立リスクが高いとされています:
- 谷沿いや山間部で、外部との出入り口が1本しかない
- 峠越えや橋、トンネルを通らないとアクセスできない
- 海岸沿いで、背後に山が迫っている(逃げ場が少ない)
- 川や崖に挟まれた地形で、土砂災害の危険がある
こうした条件に当てはまる地域は、日本全国どこにでもあるというのが実際のところです。
また、行政によっては地価や風評への影響を考慮し、「孤立予想集落」を公表していないこともあります。実際、筆者が勤務していた自治体でも、そうした判断がなされていました。ただし、集落内の住民自身への周知の有無は、市町村によってまちまちです。
そのため、一人ひとりが自分の地域を地図で確認し、「孤立リスクがあるかもしれない」と意識することが大切です。
まとめ:孤立は“他人事”ではない。だからこそ備える
孤立状態に陥っても、日頃からの備蓄と地域とのつながりがあれば乗り越えられることは多いです。
自助の備えは、他人のためではなく、自分と家族を守るため。この記事が、あなたの地域と暮らしを見直すきっかけになれば幸いです。
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