―自治会やめたい?入らない?その前に、防災の視点で考えてみませんか―
自治会は面倒?それでも災害時に役立つ理由
来年度、自治会の役員が回ってきそうでゆううつだよ…自治会ってそもそも入っているメリットがわかんないし、いっそ退会しようかな…
よくある悩みですね。確かに、役員の負担や会費など、日常生活の中で退会を考えたり、あるいは加入をためらう理由はたくさんあります。
が、実は避難所運営などの場面で自治会が災害対応に役に立っているということ、知っていますか?
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私自身、自治会長などの役員を何年も務めてきた経験から、
「顔見知りがいる」「声をかけられる」
ということが、どれほど心強いかを実感しました。
この記事では、防災の視点から見た自治会の役割と意義をわかりやすく解説します。
「自治会=面倒」というイメージを少しだけ見直すきっかけになれば幸いです。
避難所を支えるのは、自治会の中の“防災の芽”
避難所運営というと、行政職員がすべて対応してくれると思いがちですが、実は自治会や自主防災会が初動を担うケースが多いのです。そして避難所運営だけではなく、発災直後の初動においても、自主防災会は大きな役割を果たしています。
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日ごろから防災訓練や資機材点検を行っている地域では、「誰が・何を・どの順で動くか」が明確になっており、発災直後でも迅速に避難誘導が始まります。
特に、自治会の中に防災を目的とした組織「自主防災会」がある地域では、住民主体で避難所の開設や情報共有が進み、混乱を最小限に抑えられました。
つまり、自治会という“器”に、防災という“エンジン”が備わっているかどうかが、
地域の対応力を大きく左右しているのです。
自主防災会が機能した地域の実例
浦安市:自治会を母体にした迅速な避難所開設
浦安市では、東日本大震災で液状化による大規模な被害が発生。
自治会が主体となり、避難所開設・炊き出し・情報伝達などを実施しました。
とくに、防災訓練を重ねてきた地区では、避難所の立ち上げが非常に早かったと報告されており、 日常的なつながりが、非常時の行動力を支えた好例です。

出典:浦安市における東日本大震災時の自治会活動と担い手に関する研究
宮城県気仙沼市:自主防災部の成功事例
発災時にはほとんどすべての面において「防災マニュアル」を作成していたことが役立ちました。防災マップ、津波マップを作成していたおかげで避難がスムースにできたのです。また、初動体制の起動が訓練どおりに行えたり、当番で炊き出しを実施して避難所運営を円滑に行えました。

熊本市中央区黒髪地区自主防災クラブ:クラブ員による率先した避難所運営
熊本地震で開設された中学校では最大300人が避難していましたが、自主防災クラブが率先して避難所運営にあたり、それまで同クラブが買い揃えてきた間仕切り、毛布、椅子などを貸し出した他、食事、トイレ・給水支援などを行いました。
元々日頃から様々な活動を通じてクラブ員同士顔の見える関係を築いてきたことが、災害時の迅速な活動に繋がったものと考えられます。
防災から見た自治会の意義とは
ここまで見てきたとおり、いずれの地域にも共通していたのは、
「平時から訓練し、顔の見える関係を築いていた」
という点です。
もしこれが全員見知らぬ人同士の地域だったらどうなったでしょうか。
必ずしも上に述べたように円滑には進まなかったと思われます。
自治会は、自主防災会のような特別な組織を支える地域の基盤です。
平素の町内清掃、防犯活動、祭りなどの行事、役員活動などを通じて自然に人のつながりが生まれます。
そういった「人のつながり」は実災害における「共助」として非常に大きな力になります。
つまり、自治会は地域防災の「共助インフラ」といえます。

もちろん、会費、役員の負担、行事への参加が煩わしかったり、そもそも近所の人々との接触を望まないなど、自治会への加入をためらう理由は理解できます。
私は自治会長(2回)、副会長、会計など色々な役員を務めてきました。
仕事との両立で負担だったのも事実です。でもそういう経験を通じて、自治会の仕組みを知ることが出来たし、何よりも一緒に役員を務めてきた町の人たちと良い繋がりができたので、今ではやって良かったと思っています。
だから、いざという時に頼れる人がいるかどうかで、行動の速さも安心感も変わります。
つながりを持つこと=自分を守ることなのです。
もちろん、頼るばかりではなくそれぞれが救いの手を差し伸べる立場であることは言うまでもありません。
「加入しない」「退会する」の前に、“関わり方”を考える
自治会に加入しないとか、退会するかどうかは自由です。
ただ、防災という観点から言えば、「自治会に入らない」ことのデメリットを知っておく必要があります。
たとえば、地域の防災訓練に参加する、掲示板を見て情報を把握する、近所の人と「何かあったら助け合いましょう」と声を交わす─
それだけでも立派な地域防災の一歩です。
重要なのは、“どんな形で地域と関わるか”を考えること。
その意識が広がれば、地域全体の防災力は確実に高まります。
まとめ:自治会は「共助のしくみ」。防災の第一歩は関わることから
災害を乗り越える力は、結局のところ「人と人とのつながり」です。

一人ぼっちでできることはとても限定されているからです。
自治会はそのためのつながりを日常的に育てる、最も身近な仕組みです。
防災をきっかけに地域と関わること──
それが、自分と家族を守る最初の一歩になります。
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